第502夜:今年最初の古品こけし(鎌田文市)
年が明けてからもひたすら自粛生活が続く中で、今年初めて入手した古品こけしが届いた。鎌田文市の古作こけしである。鎌田文市は大正期から戦後まで長期に渡ってこけしを作り続けており、その残るこけしも数多い。しかし、文市作として心惹かれる作は昭和1桁台以前のものであり、そうした所謂古作こけしは数も少ないこともあって、なかなか中古市場には出て来ない。今回ヤフオクに出品されたこけしは、まさにそう言った時期のものであり、運よく入手できたことに感謝したい。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真はその表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは7寸5分。Kokeshi Wikiには、深澤コレクションとして22.4cmの昭和5年作が載っているが、それと大きさも同じの同手で、胴模様のみ異なっている。やや角ばった頭に肩の張った細身の胴を付けており、胴上下には2本ずつの紫ロクロ線を引いた形態は、第二の師匠でもある作田栄利の遠刈田系の影響を感じさせるが、胴裾の畳付きの部分が広がっているところなど弥治郎系の特徴も垣間見られる。頭頂のベレー帽に一側目、猫鼻の頭部描彩は完全な弥治郎系である。勘内と栄利の二人の師匠の特徴を継いだこけしということが出来るだろう。それにしても表情の素晴らしさは格別である。本作ではやや右方に視線を向け、微かな微笑みを浮かべている。
昭和10年代になってからの作(左)と並べてみた。左では頭が丸くなり、目も中央に寄って玩具っぽい雰囲気が強くなっているが、本作のような味わいは薄くなっているのが見てとれる。
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