第511夜:昭寛さんの健三郎型
鳴子の桜井昭二さんは、師匠である大沼岩蔵型を手始めに、父母の型、永吉型や岩蔵の兄弟の型など幅広いこけしを作っているが、叔父である健三郎の型は見た覚えがない。息子の昭寛さんも昭二さんを継いで多くの型のこけしを作っている。健三郎の型も作ると言う話は聞いていたが、現物は見たことがなかった。先日のヤフオクに出品された昭寛さんのこけしは、昨年末に入手した健三郎の戦前作(第497夜)とよく似ており、手元で比べてみるために入手した。今作ったばかりかと思わせる白い木肌に赤と緑の色彩が眩いばかりのこけしを安価に入手できたのは有難い。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真は、その表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは7寸8分。胴底は「昭寛」の署名だけで、型も日付も記載されていない。細身で反りの無い直胴で上部に鉋溝が1本入っている。頭も小振りであり、全体的にスマートなこけしである。ロクロ線は赤だけの古い様式であるが、出来立てのような保存状態のためか古風さは感じられず、現代的なスタイリッシュなこけしと言った趣である。
第497夜で紹介した健三郎のこけし(左)と並べてみた。こうして比べてみると、木地形態、描彩とも、左の健三郎こけしの特徴を完全に踏襲しており、そのような健三郎こけしを手本にして作った健三郎型であることが良く分かる。胴の二輪の菊花も様式は同じで上下を逆にしただけの違いである。
頭頂部を比べてみた。この左の健三郎の頭頂部の描彩は、鬢飾りと水引が繋がったような独特の様式なのであるが、昭寛さんはこれも見事に再現している。昭寛さんの力量を感じさせるこけしである。
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