第539夜:三春さんの近作(石蔵写し)
8月に入って一週間が経過した。そして東京五輪も幕を閉じた。コロナ禍での開催には様々な批判もあったが、「やって良かった」との感想は半数を超えたようだ。生で見られるという絶好の機会は失われたが、TV等の画面を通した映像でもアスリートのスポーツに対する真摯な姿勢は見る者に大きな感動を与えたようだ。しかし、この間に全国のコロナ新規感染者は爆発的に増え続け、コロナとの厳しい戦いは続いていく。さて、今夜は三春文雄さんに依頼して作って貰った近作こけしの内、石蔵こけしの写しを紹介しよう。4月の末にお願いして、6月下旬に出来上がったものである。口絵写真は、元になった「原」こけしの表情である。
「原」こけしは、「こけし 美と系譜」の38頁に掲載されている鹿間旧蔵品である。「美と系譜」ではモノクロ写真のためインパクトは薄く、それほど興味は覚えなかった。しかし、ある縁で入手した現物は鮮やかな色彩と見事な裏模様などが素晴らしく、三春さんに写しを作って貰おうと考えていたものである。コロナ禍で産地訪問などもままならず、現物を送って作って頂いた。
こちらが「原」(左)と三春さんの写し(右)である。大きさは6寸2分。「原」は胴の太いトックリ型のためもあってか、存在感のある堂々たるこけしである。胴一面を覆う赤と緑の小紋模様に、上半分には黒の井桁模様を重ねてアクセントを加えている。心憎い演出である。三春さんの写しは木地形態・描彩とも、この石蔵の雰囲気を見事に再現してくれた。
こちら、裏模様である。密に詰まった表の模様に対して、裏には写実的な菊模様を大きく描いている。さらっとした感じで描かれているが、木地山系こけしの表模様としも遜色のない構成力のある描彩である。正に石蔵の力量を感じさせる裏模様である。三春さんの写しも良い感じに仕上がっている。
改めて表情を見てみよう。原こけしでは、前髪と鬢が大きく、顔のスペースは真ん中にこじんまりとしており、その中に童女の純真無垢な瞳が描かれている。やや上目使いできりっとした表情は素晴らしい。三春さんの写しも原作を忠実に写しているが、僅かに横に広くお姉さん的な表情と言えるだろう。
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