第542夜:野地スマイル(3)
毎日が休日の生活をしていると記念日に対する感覚も薄らいでくる。そう言えば今日は秋分の日、それに合わせた訳ではないだろうが、今日はNHK総合で大谷の試合を中継していた。昨日、久し振りのHRを打ったこともあって、TV観戦をした人は多かったのではないだろうか。4時間を超える長い試合で、大谷は4四球でHRは無く、ひたすら疲れた試合ではあった。さて、野地さんの初期のこけしには特に興味を持っており、第452夜と453夜で紹介した。先日ヤフオクに、その頃の作と思われるが、表情が全く異なる野地こけしが出てきたので入手した。他に応札した人は居なかった。今夜はそのこけしを紹介したい。口絵写真は、その表情である。
こちら、左が今回のこけしで、右は前回(第452夜)で取り上げたこけしである。大きさは6寸。木地形態、胴のロクロ線模様などはほぼ同じ。但し、表情(面描)は大きく異なっている。
この手のこけしについては第453夜で紹介したように「地梨(第34号)」で高橋利夫氏が詳細な検討を加えている。この3本のこけしの内、右2本は胴上部の太いロクロ線が黄色であるが、左は橙色。また、右2本は胴底の丸爪が直径2.5cmであるが、左は2cm。このような点から、右2本は昭和53年の中頃、左は54年に近い頃の作と推測されている。
そこで、今回の2本の胴底も調べてみた。右は前回作で左が今回の作。右は2.5cm、左は2cmである。また、ロクロ線の色は、右が黄色で、左が橙色。このことから、本作は「地梨」写真の左の作と近い時期の作と考えられる。ところで、本作の胴底には緑のゴム印で「2」という数字が、また鉛筆で「53.7」との書き込みがある。53年7月というと名古屋こけし会でこの手のこけしが頒布された時期。書き込みに間違いが無ければ、本作も右のこけしと同時期の作ということになる。名古屋の頒布では、この手のこけしが面描などを変えて数種類作られたのかも知れない。そう思って、この2本のこけしを眺めてみると面白さが倍化する。
改めて、両者の表情を比べてみよう。右は、湊屋系の所謂アルカイック・スマイル、ひだりは元気でカラッとしたスマイルである。こけしの楽しみは尽きない…
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