第549夜:清一のエジコ
新型コロナの新規感染者も急激に減り、昨日、今日と暑いくらいの秋日和で11月が始まった。ワクチンの接種率も7割を超えて一応の安心感はあるが、海外では新規感染者の増加も伝えられており油断はできない状況が続いている。10日程まえに、保存の良い古品4点をヤフオクで入手した。その内の1点が、今夜紹介するエジコである。当初は誰の作か分からなかったが、2本の赤線で顎が描かれていることから調べて、長谷川清一のエジコということが判明した。この顎以外には清一のこけしとの共通点を見つけることはなかなか難しい。口絵写真は、斜め上からみた全体像である。
こちらが、そのエジコである。高さ2寸、径2寸3分、頭は緩い嵌め込みで、南部系のキナキナのようにクラクラと動く。こけしと同様の軽い材を用い、胴の肩口には段を設け、襟の部分も盛り上げて赤く塗っている。胴の部分は上下に赤のロクロ線を配し、肩の山には赤と緑のロクロ線を全面に引いている。やや頭頂部が広がった頭には土湯系のような黒の蛇の目を描き、顔の両脇には小さい鬢があるが、他に頭部を飾るものは描かれていない。点状の小さな眉・目・鼻・口は顔の中央に寄っており、口は墨の上に紅を差している。何とも洒脱な表情であり秀逸である。
清一のこけし(左)と顎の描彩を比べてみた。この顎の描彩を手掛かりに各種文献を調べ、「愛玩鼓楽」に同手のエジコを見つけた。大きさ、形、描彩とも同じことから、長谷川清一の作と判明した。昭和7年頃と記載されている。その後、「こけし往来」を見ていると、第19集で鈴木康郎氏が長谷川清一のこけしを取り上げて解説しており、こちらにも全く同手のエジコが出ていた。解説によると、昭和13年に関西方面で大規模な郷土玩具の頒布会があり、その時に頒布されたものとのこと。なお、本エジコの出品者に出所を聞いたところ以下の返答を頂いた。「※このお品物は、明治~大正にかけて香川県高松市で栄えた名家です。現在は財団法人で、以前は地元の銀行の頭取をされていた方が蒐集されたものですが、今回息子様からの依頼で買取させていただいた初品です。」 このことより、関西での頒布会での入手品と思われる。
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