第548夜:阿部広史のこけし(戦前作)
今日から11月になった。今年もあと2か月になった訳である。今日の新型コロナ新規感染者は、全国で2桁、東京では何と1桁の9人になった。感染者数が少なく出る月曜とは言え、このまっしぐらの減少は逆に恐ろしいくらいである。少ない感染者数が却って用心する気持ちを高めているようだ。さて、土湯系で太治郎家以外に「甘美なこけし」を作る系列として「上の松屋」がある。筆者が蒐集を始めた昭和40年代、阿部広史のこけしは佐藤佐志馬と共に、土湯系では最も入手難なこけしであり、戦後のものでも手元に置くことは出来なかった。金蔵から広史、計英へと伝えられたこけしは十日月形の二側目が特徴で、そのあどけなさ、可憐さと愛らしさが同居した表情はコレクターの人気も高い。特に金蔵のこけしは希少で評価も高く、広史の初期のものは金蔵と混同されることも多い。今夜の広史は昭和10年代の中頃のもので、初期のようなしっとりとした甘美さではないが、その名残を秘めた優品である。口絵写真はその表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは8寸2分。頭頂部が丸くなった頭は小さく、やや胴長の感じを受ける。頭頂部の蛇の目は太い黒帯の外側に細い黒線を引き、それを2重に重ねている。太治郎の劉海髪に似たきっちりした5筆の前髪を描き、やや太めの長い眉、二重の瞼とU字鼻の描線は細く、丸い眼点は大きい。胴模様は三段の紫ロクロ線と赤の半円を組み合わせたロクロ線模様の間に赤の華やかな花模様を描いている。戦前のこけしのイメージとしては賑やか過ぎるこけしと言えるかも知れない。
戦後の作(左:昭和27年)と並べてみた。左は三本の紫ロクロ線と赤の半円の組み合わせ、中央の花模様など戦前作の流れを引き継いだこけしであることが分かる。頭部の描彩は更に洗練されて、小寸のためもあって愛らしさが増している。広史の戦後作は、この後、頭が縦長となって黒の蛇の目が厚く被さり、重苦しささえ感じるようになってしまう。
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