第555夜:円吉のこけし
一週間ほど前、ヤフオクで古品を含む18点のこけしを纏めて入手した。中には新しいこけしや新型のようなものも含まれていたが、未だ持っていないこけしも入っており、入札に参加した。古品としての状態は普通であり、程々の価格で落札できたと思う。今夜はその中から最も大きかった円吉のこけしを紹介しよう。筆者は円吉の梅こけしが好きなので、その手の物は3本持っていたが、今回の棒こけしは初めてであった。胴底にもロクロ線が引かれた面白い様式であるのも興味を引いた原因である。口絵写真はその円吉こけしの表情である。
こちらがその円吉こけしである。大きさは1尺、胴は太目でどっしりとしたこけしである。円吉は明治期からこけしを作っていたが大正13年に転業し、昭和10年頃から復活して12年頃から本格的にこけしを作っている。復活当初のこけしは切れ長の三日月目が特徴的なこけしであった。その後は、眉目の湾曲が大きくなって目も小振りでパッチリしたものとなっていった。本作の目は切れ長という程ではないが、キリッとして格調の高い表情となっている。胴模様は5段の重ね菊、襟脇には大寸のためか写実的な梅花が描かれている。しかし、本作の大きな特徴は、胴底に同心円状の赤と緑のロクロ模様が描かれていることである。同様の様式は「愛玩鼓楽」掲載の円吉こけしに見られ、同誌の扉にその写真が載っている。そして、同誌の発刊記念として、大沼昇治が復元作を作っている。
こちら、右が大沼昇治の復元作(原寸:7寸9分)である。昇治の円吉型には定評があり、円吉の各時期のこけしを見事に再現しているが、この復元作も秀作となっている。
胴底のロクロ模様も比べてみよう。本作(左)の胴底の中心は無地であるが、昇治のそれには「ひやね」の印が押されている。これは「愛玩鼓楽」の円吉には「鼓堂」の印が押されているのに習ったものであろう。「愛玩鼓楽」ではこのロクロ模様を「円吉の遊び心」と評している。
この円吉こけしの後継者が居なくなってしまったのが、何とも惜しまれる…
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