第558夜:千代五郎のこけし
今年も残り3日を残すのみとなった。新型コロナに翻弄された1年であったが、オミクロン株の出現によって来年も予断を許さない状況が続きそうである。さて、今夜紹介するこけしは、第554夜の円吉と一緒に入手したこけしである。喜多方の小椋千代五郎・甚九郎親子のこけしは雑系に分類されており、筆者がこけし蒐集を始めた第二次こけしブームの頃にはあまり注目を浴びるこけしではなかったように思う。その後、そのこけしの多様性は世の中の風潮にマッチしたのか、次第に人気が出てきた。筆者も単体では入手する機会がなかったが、今回纏めて入手した中に入っていたので、改めて鑑賞してみたいと思う。口絵写真はその表情である。
小椋千代五郎は慶応2年6月25日の生まれ。代々の木地屋の家系で木地は父甚吾に習い、漆器の木地下などを挽いた。こけしはいつから作り始めたか判然としないが、<古計志加々美>では昭和9年前後を第1期、14年頃を第2期、15年以降を第3期としている。作品的には第1期が中心のようだ。第3期では、木地を息子の甚九郎、面描を千代五郎という合作も多いようだ。
こちらが今回のこけし。大きさは5寸7分、いわゆるマント型。頭は緩い嵌め込みになっており、南部系のキナキナのようにクラクラと動く。胴は赤のロクロ線だけのように見えるが、うっすらとやや太いロクロ線の痕跡が残っており、wiki掲載の昭和9年作のマント型と同手と思われる。
見所は顔の表情であろうか。横に長い前髪とその横には短い鬢が描かれている。短い眉の下には2筆の目が描かれ、ほぼ平行の両瞼の間に横長の眼点を入れているようだ。大きな団子鼻に墨2筆の口。野趣溢れる土俗的な面描はいたずらっ子を思わせ、面白い。
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