第554夜:美津雄の初期こけし
盛秀型の睫毛こけしにはあまり惹かれるものがなかったので、特別の訳あり品以外は殆ど所有していなかった。ところが最近は、ネットでも盛美津雄の初期の睫毛こけしが出てくるようになり、それらを見ているとじっくりと見てみたいと思うようになり、ヤフオクでも入手するようになった。友の会の例会には、盛秀を始め美津雄さん、鉄則さん、陽子さんの睫毛こけしが毎回出ることが多く、11月の例会でも、美津雄さん3本、鉄則さん2本の睫毛こけしが並んでいた。その中の1本は、その面描や署名、底書きなどから初期のものと思われ、入札に参加した。最近では、盛秀型こけしは会員には食傷気味なのか、応札は他に1件しか無く、入手することが出来た。今夜はそのこけしの紹介である。口絵写真は、初期睫毛こけしの表情である。
Kokeshi wikiでは美津雄さんは昭和52年の10月より自分名義のこけしを出しているとなっているが、「盛秀一家のこけし辞典」によれば、52年の7月が販売用のナンバー1番ということらしい。そして1000番に達したのは昭和54年3月とのことで、この番号付きのこけしが初期こけしと言ってよいだろう。この時期の署名は「もり」や「みつお」となっており、その後54年後半からはフルネームの「もりみつお」となり、昭和60年より姓のみ漢字の「盛みつお」となるようだ。さらに、平成7年からは「盛美津雄」と全て漢字となる。
こちらが今回のこけしである。大きさは9寸4分。胴底の署名は「もり」、「S53.3.1」「番号の始まる前」との入手者の書き込みがある。均整のとれた木地形態に牡丹の胴模様、目・鼻・口が中央に寄って集中度の高い表情になっている。初期の睫毛こけしとしても手慣れた感じに仕上っている。
手元にある美津雄さんの初期こけしを並べてみた。
・左から9寸3分(S52年12月)「もりみつお」
・2番目:9寸4分(S53年3月)「もり」
・3番目:1尺(?)「もり」
・4番目:1尺3分(?)「みつお」#487
・5番目:8寸(?)「みつお」#791
・6番目:5寸(S54年7月)「もりみつお」
こうして並べてみると、美津雄さんのこけし製作の推移が見えてくる。木地形態では頭頂部の赤丸の部分が当初は出っ張ているのが分かる。この傾向は左の4本までにみられ右2本では綺麗に削られており、この辺りのも木地技術の向上が伺われる。
この中で、一番惹かれるのは左端のこけし。他のこけしと比べると頭が大きめで胴も太くてスタイリッシュではないが、そこが却って古き良き時代の香りを残しているように思える。注目の睫毛目は湾曲が大きく筆が良く伸びている。睫毛があまり目立たず、こぼれるような笑顔が溢れている。初作(初期作)の良さが現れているこけしと言えるだろう。
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