第569夜:折り紙付きのこけし(吉太郎)
約2か月続いたまん延防止等重点措置がようやく解除となったら、今度は供給電力不足で停電の恐れがあるから節電して欲しいとの要請が出された。ウクライナの戦争状態を考えれば僅かな我慢に過ぎないのだろうが、何ともやるせない世の中になったものである。さて、物の価値を考える上で「折り紙付き」という評価がある。それをこけしの世界に置き換えてみると、著名コレクターの収蔵品でそのコレクターの蔵票等の張られたものがその類と言えるだろう。また「陸奥売店」のゴム印もその一つに数えれるだろう。「陸奥売店」とは戦前、仙台駅前にあった陸奥ホテルの1階売店のことで、そこでは土産物と一緒にこけしも売っていた。特に昭和15~16年頃に多くのこけしを扱っていた。その紫色のゴム印が押されたこけしは戦前の古品であることが明白で、しかもその保存の良さが特筆される。今夜紹介するのは、その陸奥売店印の押された小林吉太郎のこけしである。口絵写真は、その表情である。
先ずは、陸奥売店のゴム印をお見せする。そして、そのお約束通りの保存の良さである。その素性の良さから、ヤフオクでの出品価は相当強気の設定となっており、それが影響してか他に応札者は無く、筆者の手元に収めることができた。
こちらがその吉太郎のこけしである。大きさは6寸5分。陸奥売店の印から、昭和15、6年頃の作と思われる。吉太郎の米沢信濃町時代のもので、吉太郎としは晩年、木地は弟子のものが多く、描彩にも弟子のものがあるために、その出来栄えにはかなりムラがあるようである。本作は胴が長く、頭が小さい木地形体であるが、眉・目の描線は鋭く緊張感があって素晴らしい。鬢飾りは耳状であり、達筆の胴模様も秀逸である。筆に衰えは感じられず、晩年作とは思えない充実振りである。
ほぼ同時期と思われる大寸物(1尺7分、第472夜)と並べてみた。2本とも保存完璧、表情、胴模様とも同種であり、吉太郎晩年の秀作と言って良いだろう。2本とも胴底は切り放しであり、真っ直ぐには立たない。
顔の表情を比べてみた。大寸の方が、顔の描線はやや細いようである。
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