第570夜:政弘さんの松之進写し
今日から4月である。東京では満開をやや過ぎたとは言え、まだまだ桜の美しい時期であり、今日から多くの人が新しい気持ちで物事に取り組んでいく区切りでの日でもある。一方で、世界に目を向けてみればロシアによるウクライナ侵攻は長期戦の状況となり、新型コロナの感染もまだまだ予断を許さず、日本では第7波の懸念さえ囁かれている。さて、昨日、遠刈田の早坂政弘さんのこけしを手にすることができた。最近の政弘さんの松之進型こけしへの進境は著しく、それを踏まえて東京こけし友の会では友の会特別頒布の第2弾として、今年の新年例会で松之進写しを頒布した。コロナ禍のため新年例会をリモートで参加した筆者は例会で入手することができず、その機会を待っていたので嬉しいことであった。口絵写真はその表情である。
直助と共に遠刈田系の2大巨頭と称される松之進のこけしは明治期のものから多くの作が知られているが、やはり古い物ほど格調が高く見どころも多い。特に大正期の1尺こけし(久松旧蔵、現箕輪氏蔵)は素晴らしく、六郷父娘などによって忠実な復元作も作られている。今回の松之進は友の会会長の鈴木氏所蔵のもの。昭和初期とされる佳品である。
こちらがその写し。大きさは9寸8分。先ずはその完成度の高さに驚かされる。木地形体、描彩ともほぼ完璧と言えるだろう。本作はロー引きをしていないようなのも好ましい。胴上下に紫のロクロ線を配し、その間に隙間なく4つの菊を重ね、緑の葉を添えている。遠刈田こけしの古様式の良さが遺憾なく発揮されている。そして、何と言っても表情である。アクセントの付いた切れ長の大きな眉・目は、張りのある強い表情の中に微かな微笑みを湛え、得も言われぬ雰囲気を醸し出している。これまで精進してきた政弘さんの成果がここに結実したと言える。
裏模様の菖蒲と頭頂部を俯瞰して見た。こちらも良い。今後の政弘さんの松之進型への期待が高まる。
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