第576夜:佐久間虎吉のこけし
土湯系湊屋の佐久間虎吉は浅之助の7男、由吉を長男とする佐久間兄弟の末弟である。名立たる兄弟の中では若いだけあって清新な魅力に溢れたこけしを作った。古い時代のこけしは不明で、残っているこけしは昭和15年以降のものが大半である。戦後のこけしは当初は世の中の風潮に乗った新型っぽい甘いこけしであった、30年代後半に入って収集家からの勧めで自身の戦前のこけしを復元して復調し、収集界に喜ばれた。先週、ヤフオクに虎吉の息子義雄のこけしが出品されていた。「義雄」署名のこけしは少なく人気もあって入札価はみるみる上がっていった。そんな折、ヤフオクには虎吉のこけしも出品されていた。義雄と同じ大きさでよく似たこけしである。即決となっていたので、少し高いとは思ったが入手した。口絵写真は、その虎吉こけしの表情である。
Kokeshi wikiでは戦後低迷期の虎吉こけしを「戦後になると、胴は怪しく膨れて、下部に菊模様を加え、目じりが垂れ、口は赤だけで描く甘い作風に変わってしまった。 」と評している。このこけしが正にそれであろう。虎吉作とは言え、この作ではなかなか食指は動かない。
こちらが今回のこけし。上の写真と比べて、相当に改善されているのが見て取れる。胴底には「68才」との記載があり、昭和34年から35年頃であろう。頭は縦長の楕円形であるが、胴は完全に三角胴になっている。wikiでは「昭和35年福島こけし会が戦前の三角胴のこけしの復元を依頼した」とあるので、それにより作られたものかも知れない。面描には低迷期の名残も若干感じられるが、瞳に甘さは見られない。三角胴の上下を赤と黒のやや太いロクロ線で締め、その間は赤と緑の返しロクロで埋めている。もはや湊屋正調の土湯こけし復活と言って良いだろう。このあと昭和36年には橋元四郎平氏の依頼で、昭和15年の虎吉自身の作を写しており、完全復活と言う事になるのであろう。
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