第579夜:昭二さんの西田型
今夜も、桜井昭二さんのこけしの話である。昨夜の民之助型から少し遅れて今回のこけしがヤフオクに出品されていた。黄胴に真っ赤な車菊が3輪、先ずはちょっと派手かとも思われる胴模様に目が行った。岩蔵型を中心に多くの型を擁する昭二さんのこけしであるが、高勘系に傾注していた筆者の蔵品には永吉型を除いてそれほど多くの作がある訳では無かった。今回の出品作は大きさ、出来栄え、保存状態のいずれもが良好であり食指を動かされたが、胴底に書かれた「西田型」という書き込みが気にかかった。そこで、西田著「原郷のこけし群」の鳴子系の頁を括ると、出品作と同じ作風の岩蔵こけしがあるではないか…。今夜はその西田(岩蔵)型こけしを紹介しよう。口絵写真は、その表情である。
図譜「原郷のこけし群」第一集の62頁(#100)に細身の岩蔵の原こけしが掲載されている。大きさは6寸7分。細身の胴で上部と下部に1本ずつ鉋溝が入っている。肩の山の上部に太い赤ロクロ線が入っているのがアクセントになっている。黄胴に赤い車菊と緑の茎葉、その間に紫の点飾りも入っており、岩蔵後期の華麗なこけしである。
こちらが、今回のこけしである。大きさは「原」と同じ6寸7分。木地形体、描彩とも原こけしを忠実に写している。胴底には「西田型」の外に「1992.8.7」の書き込みがあり、平成4年の作と思われる。細かく比較すると、原こけしには肩の山のロクロ線が細い赤線の下に細い緑も引かれているのだが、本作では緑線は入っていない。このこけしも昨夜の民之助型と同様、他に入札者がなく1000円での入手となった。安価な入手は嬉しいのだが、これだけの作が殆ど注目されない昨今のこけし界に危惧を感じざるを得ない。
こちらも、ヤフオクで見付けた昭二さんの5寸3本組。左から永吉型、甚四郎型、コウ型で、同時に作られたのであろう。流石に腕達者な昭二さん、それぞれ特徴のあるこけしを見事に作り分けている…。
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