第585夜:佐藤正吉のこけし(中ノ沢時代)
コロナ第7波と酷暑の中で8月を迎えた。本ブログで紹介しようと思っていながら、たまたま忙しかったりしてそのままになっているこけしがある。そういったこけしの中から、今夜は昨夜の正吉ダルマとの繋がりで、佐藤正吉のこけしを取り上げてみた。正吉のこけしは好きなこけしなので気に入ったものをチャンスがあれば入手している。正吉のこけしは遠刈田時代、中ノ沢時代、登別時代に分けられるが、今夜のこけしは中ノ沢時代のものである。
正吉が中ノ沢に移ったのは昭和11年で、酒井正進雑貨木地店の職人となって、こけしも沢山作ったという。その後、昭和13年8月に北海道の登別に移るので、中ノ沢時代は3年に満たないということになる。
こちらが今回のこけしである。大きさは9寸。「かゞ山」の青印が押されており、加賀山氏の旧蔵品と思われる。このこけしの特徴は何と言っても全体の1/3を占める大きな角張った頭である。遠刈田系の古こけしには丑蔵のフランケンを始め巨頭のこけしも散見されるが、正吉のこけしで巨頭なのは中ノ沢時代だけのようであり、中ノ沢という土地柄との関係がきにかかる。また、胴上下のロクロ線が緑になるのも中ノ沢に行ってから…。
戦前の遠刈田(右)、中ノ沢(中)、登別(左)時代のこけしを並べてみた。遠刈田時代はやや角張った縦長の頭に格調の高い三日月目を描き、前髪は先が分かれていない。胴のロクロ線は太い紫で大振りの重ね菊を描いている。中ノ沢時代になると角張った巨頭に迫力のある大きな三日月目を描き、前髪は先が分かれる。胴のロクロ線は緑で、胴の重ね菊は花弁の数が増えて緻密になる。登別時代になると頭は丸く小さくなり、面描の筆致もおとなしくやさしい表情となっている。胴の重ね菊にも勢いがなく平坦なものになっているが、流石に正吉らしさはまだ失われていない。
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