第586夜:盛のこけし(昭和初期)
9月に入って一週間が経ち、7月後半から爆発的に広がったコロナ第7波の感染者数もようやく減少の傾向が見られるようになった。ここのところ、こけしの入手はめっきり減っていたが、8月はとうとうヤフオクでの1本のみとなってしまった。本ブログも更新が滞り、以前に入手して未だ紹介していないこけしを見つけ出しての掲載に努めている。さて、今夜は高橋盛のこけしである。盛のこけしはその時代変化を見るために機会があれば入手に努めてきたが、今回は「木の花」にも掲載された久松旧蔵のこけしである。
こちらがそのこけしである。大きさは8寸5分。久松保夫氏の旧蔵品で「こけしの世界」や「木の花」(第22号)に掲載されているものである。胴底に「4.4.26」の書き込みがあることから、昭和4年頃のものと推測される。昭和初期の盛こけしの類例は少なく、「木の花」掲載の昭和2,3年頃の作は大正期のように肩が丸肩になっている。本作は肩が角張っており、昭和7年の木形子洞頒布に代表される平頭・角肩の形態に近いが、胴中の反りはなく直胴で肩の山は高い。頭は蕪型だが頭頂部の扁平度が強い。やや膨らんでいるとも言える胴は手で握ってみると意外にしっくりして好ましい。
胴底と頭頂部の描彩である。「木偶坊」(久松氏)のラベルが貼られている。「木の花」の解説で『胴模様は盛だが面描が弱く、盛かどうか疑問との声もでたが、検討の結果盛には違いなかろということで、…』との記載が気になって、顔の表情を手元で凝視したが、確かに弱い感じを受ける。眉と上瞼の描線が薄くなっていることもあって力なく単調である。また眼点も小さく(特に向かって左目)、力無く感じる。しかし弱い印象は受けるものの、前髪、水引、鬢、鼻、口の描法は盛で間違いないだろう。表情は描いた時の工人の気持ちを表すとも言えるので、そういう時期の盛こけしということだろう。
昭和初期と思われる盛のこけしを3本並べてみた。右から1尺2寸(昭和初期)、8寸5分(昭和4年)、7寸7分(昭和7年)。昭和1桁台の盛こけしである。
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