第589夜:信雄さんの静助型か…
我妻信雄さんのこけしは筆者に遠刈田系こけしの魅力を教えてくれたこけしである。昭和40年代の末から信雄さんのこけしにのめり込んでいったので、それは信雄さんの直治型追及の歩みと重なるものであった。従って、信雄こけしイコール直治型と思い込んでいた。信雄さんの師匠は佐藤守正さんであり、守正さんは静助の息子で静助型も作っていた。従って、信雄さんも静助型を作ることは可能であったと思われるが、これまで信雄さんの静助型は見たことがなかった。先日のヤフオクに通常の信雄こけしと雰囲気が異なるものが出ており、それが一筆目であったことから静助型ではと考えて入手した。今夜はそのこけしを紹介したい。口絵写真は、その信雄こけしの表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは4寸7分。信雄さんのこけしで、こげす型を除いて一筆目のこけしは見たことがない。最近発行された「わたしたちの 我妻信雄」を見ても、標準型では本人型でも直治型でも一筆目は見当たらない。それと胴の形態が裾の広がった三角胴になっていること。この胴の形も本作以外に見たことがない。胴上下のロクロ線が緑であること、胴模様が重ね菊であることも含めて、静助型の特徴が随所に現れているのである。
師匠守正さんの静助型(左:7寸)と並べてみた。守正さんは昭和30年代後半から静助型を作っており、信雄さんもそれを見る機会は多かっただろう。最初は師匠に倣った遠刈田一般型のこけしを作っていた信雄さんは、静助型を継ぐことはなく、やがて直治型で頭角を現すことになる。本作は、何かの折に客の要望で作ったものと思われる。そのため5寸にも満たない小寸にしたのであろう。
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