第590夜:義一さんの盛写し(3)
11月に入り今年もあと2か月となった。ようやく収束かと見えたコロナはまた盛り返しつつあるようだ。ここのところ新たに入手するこけしはめっきり減り、本ブログに掲載する話題も減ってしまった。本ブログの書籍化を進める中で、未掲載のこけしも出てきたので、紹介したいと思う。千夜一夜(1)の第15夜で高橋義一さんの盛写しを紹介したが、そこで触れていた秋田時代の盛こけしの写しである。義一さんにお願いした最初の写しであり、その出来の良さに驚き、以後義一さんには沢山の写しをお願いすることになった。口絵写真はその写しの第2作であり、最も肉薄した作品である。
原こけし(左)と並べてみた。原こけしは秋田時代の盛のこけしで大きさは8寸7分。平成17年5月の東京こけし友の会の入札で入手したもの。まだ古品にはあまり手を染めていなかった頃で、高価なものは買えなかったが、本品は保存も良くなかったためか何とか手に入った。頭が小さめで、肩の山が高いのが特徴で、昭和15,6年頃の作と思われる。義一さんの写しは平成18年3月の作(第2作)で、最も「原」に肉薄した作となっている。義一さんは実に忠実に原を写してくれた。木地形態から始まって、胴の描彩から顔の表情まで、その出来栄えは見事の一言に尽きる。胴の菊花の筆致は流石に盛の孫を彷彿させる。
表情も比べてみよう。この時期の盛の顔は目が小さく左右に離れていて、皆川たみ子と混同されるが、たみ子が盛こけしの描彩に参加したのは昭和17年以降なので、本作は盛であろう。義一さんは、その目は勿論、前髪から鬢まで見事に再現してくれた。
義一さんに最初に写しをお願いしたのは平成17年の年末で、翌18年1月の末に写しの第1作が出来上がった。写真の左がそれである。この時点で木地形態・描彩とも十分満足のいくものであったが、目の位置がやや上だったこともあって凛とした若々しい表情となっており、盛の表情とはやや味わいが異なるため、そこを見直して貰った。そうして3月に出来上がったのが第2作(写真中央)である。目を下げて左右の間隔も広げたために、盛の味わいを十分に再現したものとなった。なお、第1作は白胴であったが、第2作では黄胴にしてもらった。その後、この写しは名古屋こけし会でも頒布された(写真右:平成18年5月)。
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義一さんの作品、やっぱり良いですね。
筆が立つだけじゃなく、昔のこけしの雰囲気を自然に出す能力が凄いと思ってます♪
投稿: しょ~じ | 2022年11月 2日 (水) 21時32分
しょ~じ様
久し振りに出しましたが、やはり秀逸です!
しょ~じさんから、義一さんのこけしが出来ていると教えて貰い、送って貰いました。
投稿: 国恵 | 2022年11月 3日 (木) 18時44分