第592夜:改めて文吉(2)
昨夜は佐藤文吉の第2のピーク期のこけしを紹介した。話は前後するが今夜は第1のピーク期のこけしを紹介しよう。第2ピーク期の作は、鹿間時夫氏が<こけし鑑賞>で絶賛した大名物の1尺3寸余りの文六こけしを目指したものであり、どうしても作為が見え隠れする。対して第1ピーク期の作は文六こけしを元にしながらも、文吉自身のこけしとして作られており、その素直なこぼれんばかりの笑顔が魅力的なこけしである。口絵写真はその昭和36年作の表情である。
こちらに第1ピーク期である昭和36年のこけしを2本並べてみた。大きさは左が1尺1寸2分、右が1尺2寸。全体的なバランスからすると頭は小さめで、やや胴長な感じがするこけしである。左作には胴底に「36.4」の鉛筆書きもあり、36年4月のものと思われる。右作では「36年」の鉛筆書きがあり、「文六型」の署名もある。胴には2段に大きな牡丹が描かれており、大名物の文六こけしを模したものであろうか。
胴底の署名と表情である。単に「及位 文吉作」と署名した左作とわざわざ「文六型 文吉作」と署名した右作。胴模様は異なるものの顔の表情は一緒。湾曲の大きな細い三日月目で、その溢れんばかりの微笑みはこの時期の文吉こけしの最大の魅力である。この表情は文六を真似たものではなく、文吉自身が作りあげたものである。
さて、第1ピーク(左:36年)と第2ピーク(右:41年)の文吉こけし(1尺2寸)を並べて見た。ともに牡丹模様の文六型で、文吉を代表する極上のこけしであるが、どちらが良いかの好みは分かれるのではないだろうか…。筆者はやはり第1ピーク期のこけしを選んだが…
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本年は、文吉氏生誕100年であり、本稿があることは本人にとっても喜ばしいと思われます。本来は記念して展示会でもあればと思っておりました。残念です。
投稿: | 2022年11月 7日 (月) 12時17分
コメントありがとうございます。
文吉さん生誕100年でしたか。
名工の名を欲しいままにした文吉さんも知る人が少なくなって寂しい限りです…
投稿: 国恵 | 2022年11月 9日 (水) 19時37分