第611夜:柿崎さんの鳴子型
中ノ沢の柿崎文雄さんは蛸坊主の会の代表として、人気の中ノ沢こけしを支えている。齢70台の半ばになるが精力的にこけしを作っているので知っている人は多いであろう。しかし、その柿崎さんが最初は鳴子の「高亀」で修業し、鳴子系のこけしを作っていたことは意外と知られていないかも知れない。「高亀」のこけしを調べていけば出てくる工人ではある。鳴子系こけしの製作は昭和42年~45年頃までで、中古市場でもめったにお目にかからない。先月その柿崎さんの鳴子型がヤフオクに出たので入手した。今夜はそのこけしの紹介である。
こちらがそのこけしである。大きさは8寸、胴底に「44.2.2」の印が押してあるので昭和44年初め頃の作か。kokeshi wikiにほぼ同手のこけしが載っており、そちらは43年10月とあるから、43年後半~44年初め頃はこのようなこけしだったのであろう。角張った頭はやや縦長である。戦後の武蔵こけしは目の位置が上がり品格のあるこけしを作っており、柿崎さんを直接指導したと思われる正吾さんは42年をピークに格調の高いシャープなこけしを作っていたから、その影響は大きいと思われる。目と鼻の間隔が開き過ぎという感じもするが、古武士を思わせる辛口のこけしである。
以前に入手した柿崎さんの6寸こけし(右)と並べてみた。右は「高亀」の規格通りに白胴で胴下部に鉋溝が1本入っている。「S43年」との書き込みがある。左と比べて頭が丸くなっている。前髪が小さく、眉・目の描彩は筆太で短い。小寸と言うこともあるが、面描は左とやや異なり玩具っぽく親しみのあるこけしである。43年の早い頃の作であろうか。こけしの出来栄えからも「高亀」系のこけしを語る時には外せない工人の一人と言えるだろう。
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