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第616夜:「辞典」のこけし(陳野原和紀)

Jinnohara_kume4305_kao 第612夜では菅原敏のこけしを紹介したが、今夜は同じく「こけし辞典」の口絵写真<復元こけし(1)>に掲載されている陳野原和紀のこけしを取り上げてみたい。本こけしも最近ヤフオクで入手したもので出品者も同じことから、同じコレクターの収集品と思われる。辞典の掲載こけしは昭和40年代前半のものが中心であることから、その頃に活動してたコレクターなのであろう。口絵写真は、そのこけしの表情である。

土湯の陳野原和紀は、「昭和42年3月より43年5月まで斎藤弘道につき木地修業、同年4月に独立開業、5月より鹿間時夫の勧めにより佐久間粂松のこけしを復元、以降粂松型復元に取り組んだ。」とkokeshi wikiに記されている。

Jinnohara_kume4305_2men

こちらが今回入手したこけし。大きさは7寸5分。「辞典」掲載のこけしと同寸・同型のこけしである。胴底には署名以外に鉛筆書きで「68.5.8 第一回現地」とあり、また赤ボールペンで「シカマ」と「⦿」が書かれている。これは鹿間氏の依頼による復元品の第一回目を意味するのであろう。「辞典」掲載品も昭和43年5月で鹿間氏蔵品とあるから、この時に一緒に作られたものと思われる。現地に赴いて入手したとすれば、相当のコレクターと思われる。鹿間時夫氏はこの頃、各地の工人に古作の復元を奨励しており、本作もそのなかの1本という事なのだろう。本作の「原」こけしの特定は出来ていないが、粂松の標準的な優品と思われる。和紀の復元作もまた粂松の特徴をよく捉えており、優作と言えるだろう。

Jinnohara_kume4305_hikaku

ところで、筆者は以前、和紀の初期作を入手しており、第97夜で紹介している。その内の1本を今回の作と並べてみると、木地形態、胴のロクロ線模様、頭頂部の大きな前髪、蛇の目、カセともほぼ同じなのである。眉・目・鼻・口の面描だけが異なるのである。更に右こけしの胴底には左と同じ鉛筆書きで「68.5.8」とある。これは一体どういうことなのであろうか。この2本は昭和43年5月8日に現地(土湯)でコレクターに渡ったものと思われる。和紀の初作は紡錘形の目をしたものであったと言うから、右のこけしがそれにあたるのかも知れない。

Jinnohara_kume4305_syomei

上2本の胴底の署名と書き込みである。

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