第622夜:弘道の微笑み(誕生4)
3月中旬に弘道の33年7月作を入手できたと喜んでいたら、それから2週間も経たない内に再び同様の弘道こけしがヤフオクに現れた。出品者は前回とは別の方である。前作とはちょっと違った感じなので、こちらも頑張って入手した。7月作かと思っていたら胴底の署名は9月18日の作とある。弘道初期の変遷の範囲が広がった。口絵写真はその表情である。
斎藤弘道のこけしが写真で紹介されたのは「こけし手帖22」(昭和33年8月発行)の「こけし界ニュース」が最初と思われる。そこでは本型、古型、太子型の3本が載っている。この3本は「こけし手帖25」の「土湯にて」(鹿間時夫氏寄稿)でも再掲され、33年6月作と記されている。鹿間氏は6月作を処女作と称し佐久間貞義氏の太治郎が「原」、また10月作は小野洸氏の太治郎が「原」だとして、その弘道の写真も載せている。そして8月作にも触れ、顔が皆違うと語っている。
こちらが今回のこけしである。大きさは7寸3分。保存状態が良く、胴のロクロ線模様は紫も鮮明に残っている。但し、頭部はやや古色と木地のシミが出ている。前回の7月作と比べても頭が横に広がって大きくなっているのが分かる。前回作が細身だったこともあって、その違いは大きい。頭が大きくなった分、面描も横に伸び鬢も太くなって正面からよく見えるようになった。大きな瞳もやや下がってにやけた感じがしないでもない。
同じ本型(左:7月作)と並べてみた。顔の表情と胴模様を比べてみて頂きたい。
さて、手持ちの弘道初期作を並べてみた。左から6/21、6/30、7/26、9/18作である。所蔵の6月作(左2本)は保存が悪いが表情の特徴はよく出ている。なお、6月作の写真は「こけし 美と系譜」プレート80(88頁)の3本の弘道作の内の中央である。頭は角張った縦長で目は細く、目尻が下がっているのが特徴である。上写真の左2本の表情も同様である。7月作になると、頭は縦長が解消し、目は上下の瞼の間が開いて眼点が大きくなり愛らしい表情となる。8月作は「木の花」(第30号)の18ページに箕輪氏蔵の9寸が載っている。上写真右の9月作は7寸3分と箕輪蔵品よりやや小さいため頭が短めとなっているが、その他の特徴はそっくりである。そして10月作は「美と系譜」3本の左がそれで、9月作に比べて卵型の頭で面描整い、33年のピークとなる。こうして6月から10月までの作品を見ることが出来、弘道の33年作探求の旅もそろそろ終焉が近づいてきたようだ。
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斎藤弘道さんの思い出と言えば、平成12年の8月9日に友人と日帰りで土湯にドライブに行ってきた時の
事です、丁度その少し前にNHKの「昼どき日本列島」という番組で土湯がとりあげられた時に弘道さんが
奥さんのとみさんと共に出演しているのをみていたから、楽しみにしていたのですが、いざ現地で購入した
こけしを手にしてみて、期待していた(今回の夜話で紹介しているみたいなの)とは、いささか違う出来だった
ので、少しガッカリした記憶があります。
投稿: 益子 高 | 2023年4月 9日 (日) 19時21分
益子 高 さま
そうでしたか。期待が大きいとガッカリ感も強くなりますね。
私が弘道こけしを最初に買ったのは昭和46年で、こけし収集の3番目でした。
わざわざ土湯温泉まで行きました。その時のこけしは太治郎型として満足できるものでした。
その後、50年代に入ると弘道さんのこけしは大きく変わっていき、
もはや初期の瑞々しくもねっとりとしたこけしは復活しませんでした。
今は、中古で初期のこけしを入手することが出来、有難いことです。
投稿: 国恵 | 2023年4月 9日 (日) 20時13分