第635夜:我妻勉のこけし
先日ヤフオクに出ていたこけしである。一見して佐藤重之助のこけしと思ったがタイトルには「我妻勉(肘折時代)」とある。キリッとした表情に惹かれてそのページを開いて掲載された写真を見てみると、重之助こけしに酷似しているが表情の雰囲気が確かに異なる。珍しいこけしなので注視してるとかなりの人気があり価格もうなぎ上りに上昇して行った。最後は二人のマッチレースとなり何とか入手できたものの相当の高額になってしまった。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真はその表情である。
kokeshi wikiによれば、「我妻勉は昭和25年9月25日の生まれ。元来こけし愛好家であったが、こけしの製作を志し、山形県肘折温泉の佐藤重之助に弟子入りして、こけし製作を学んだ。年期明け後独立し、白石市の宮城物産に職人として勤めるようになった。身体があまり丈夫な方ではないので、製作数は少なかった。平成14年4月7日没、行年55歳。 」とある。また、「肘折での修業中は重之助の型を作っていたが、宮城物産では肘折の横山政五郎型等を作る。」と。
さて、こちらがそのこけしである。大きさは8寸6分。胴底には「51.3月 肘折時代」とある。肘折での修業時代が何時からなのかは確認できないが、wikiに掲載されているこけしは昭和53年、54年、平成9年でいずれも政五郎型なので、51年後半から53年前半の間に独立したものと思われる。
本作は昭和50年頃に重之助が作っていた周助型を模したこけしと思われる。肩に段が有り、胴は下部が微かに膨らんだ形で、角張った大きめの頭とのバランスが良い。胴模様は肘折菊7輪を縦3列に並べている。大きな前髪に鬢が長く伸び、その間に眉・目・鼻・口が描かれている。入札の写真では「ドヤ顔」に思えたが、手元でじっくり見てみると、品のある凛々しい表情になっている。この重之助型は独立後は作っていないようだ。巳之助・昭一工人に遠慮したのかも知れない。50台での早逝が惜しまれる。
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