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第633夜:「辞典」のこけし(阿部勝英)

Syoei_shikama8_kao昨1日は日本の二人のスーパースターの活躍に日本中が湧きかえった。大谷翔平と藤井聡太である。特に藤井君は20歳という最年少での名人獲得、7冠制覇を成し遂げ、将棋界に新しい歴史を刻んだのである。
さて、最近、昔のこけしの文献に掲載あるいは縁のあるこけしがネットオークションに出品されるケースが多々見られるようになった。第616、617夜で紹介した陳野原和紀のこけしもそれに充るもので「こけし辞典」に掲載されたものであった。今夜は同じく「辞典」に掲載されている阿部勝英のこけしが出品され運よく入手することが出来たので紹介したい思う。口絵写真はそのこけしの表情である。

阿部勝英は「大正13年2月27日の生まれ、25年3月土湯松屋に来、27年9月8日阿部治助の嫁未亡人シナの入婿となる。 43年2~4月阿部一郎につき木地修業、描彩はシナの指導による。」とkokeshi wikiには記されている。陳野原和紀とほぼ同時期に木地修業を始めたことになる。そんなこともあって、鹿間氏の白羽の矢が立ったのであろう。

Syoei_shikama8_2men

こちらがそのこけしである。大きさは8寸1分である。胴底には「68.5.8 現地」という鉛筆の書き込みと赤で「⦿」が書かれている。「こけし辞典」では阿部勝英の項に勝英の初期のこけしが3本載っており、その真ん中の1本が本品である。「辞典」ではS43・5(SK)とあり、SKは鹿間氏のイニシャルであろう。「原」のこけしを探ってみると「木の花(11号)」の『治助のこけし』の中に掲載された⑯のこけしが見つかった。頭が小さく、かなり胴長でバランス的には面白いこけしである。昭和13年の作とあり、「この年代の特色は前髪が厚く大きく、胴下部のロクロ線が大きくあき、空白になることとロクロに黄が加わることである。」と解説されている。勝英の写し(本作)はこの治助の特徴を忠実に写し、独特の鯨目も良き感じに再現されている。

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胴底の日付(68.5.8)は第616夜の陳野原和紀と同日であり、この時に和紀と勝英に作らせたことが分かるのである。

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