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第641夜:幸兵衛のこけし

Kobe_s9botan_kao7月の友の会例会では、ミニギャラリーとして「幸兵衛と伊太郎」と題して所蔵の幸兵衛と伊太郎のこけしを展示して簡単な解説を行った。伊太郎のこけし(大小2本)は本ブログで紹介済だが、幸兵衛のこけしは未紹介なので、改めて紹介したいと思う。幸兵衛も伊太郎も津軽系の希少こけしであり所蔵することを考えたことはなかったが、運良く巡り合わせで国恵志堂にやってきた。口絵写真は幸兵衛の表情である。

Kobe_s9botan_3men

こちらが、幸兵衛のこけしである。大きさは8寸。ここ数ヶ月、古品から戦後の話題作まで相当数の良品を出品しているコレクター(出品は業者)の所蔵品であった。姿・形も良く、色彩も鮮明に残っており、第一級の幸兵衛こけしであるが、何と顔の真ん中の鼻の部分が黒くなっている訳あり品である。この唯一の欠点のお陰で落札価がかなり抑えられ、筆者の元にやってきたのである。胴底の写真で分かるように、使用した用材はその殆どが有色であり、その中の僅かに白くなった部分を前面にして面描と胴模様を描いている。当時のこけし材が残り物の端材を作っていたことが伺われる。

Kobe_s9botan_atama_soko

細い首に髷が有り、胴は中央部が凹んだくびれ胴、そこに牡丹模様を描いている。木村弦三頒布(昭和9年4月)の頃の作品であろう。

Kobe_s9botan_hikaku

ミニギャラリーに持ち寄られた定評のある同手のこけしと並べてみた。同時期のものと思われるが、形・描彩ともにやや違いが見られる。大きさ(高さ)は同じであるが、本作の方がやや太目でどっしりとしている。

Kobe_s9botan_kao_hikaku

面描を比べてみよう。頭も本作の方がややおおきく、面描の筆致は太く勢いがあり、表情には気品が漂っている。鼻の部分に節があり、そこも当初は白かったと思われるが、月日と共に色が出てきたのであろう。

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