第639夜:昭二の初期作2
活動の大半が戦後である鳴子の桜井昭二は戦前作が残っている稀な工人でもある。14歳頃から木地挽き・描彩を始め、当初は父万之丞を模したこけしであった。戦後は伯父大沼岩蔵の弟子となり、岩蔵こけしを継承して鳴子の中心的な工人として活躍したことは周知の通りである。戦前の万之丞型は、眼点の大きな愛らしいこけしであり、kokeshi wikiにもその手の作例が載っており、同手の筆者蔵は第494夜で紹介している。ところで、先日ヤフオクに出た16才との記載がある昭二のこけしは面描の雰囲気が異なるものであり気になって入手した。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真はその表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは7寸5分。戦前の昭二の万之丞型は蕪頭のものが多いが、本作は丸頭である。また前髪の形も異なっており、松三郎に似た穏やかな大人びた表情のこけしとなっている。
手持ちの戦前昭二のこけし(左)と並べてみた。御覧のようのその差異(特に頭部)は大きいのである。
そこで、胴底の署名を比べてみた。「桜」と「昭」の字の書き癖が同じであることが分かる。昭二本人の署名ではなく、別の誰かが署名だけ書いたと考えられないこともないが、やはり2本とも昭二の作と考えるのが妥当と考えられる。そこで、参考にしたであろう万之丞のこけしを調べてみると、<木偶相聞>203番の万之丞のこけし(昭和16年頃)が、昭二の本作と表情が良く似ていることが分かる(第911夜参照)。従って、本作はこのような万之丞のこけしをお手本とした昭二のこけしとすることができると思う。
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