第660夜:平頭の盛こけし
一昨日のヤフオクで落札した高橋盛のこけしが早くも届いた。童宝舎の出品で童宝舎のコレクション図集「こけし綴り」(その四)に掲載されているものである。童宝舎の古品はこれまでにかなり入手しているが、今回も「高勘」好きの筆者には見逃せない1本であった。昭和一桁の古品にしては安価に入手できたものである。今夜は、その盛こけしを紹介しよう。口絵写真はその表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは8寸1分。頭は蕪形の平頭で小さめである。胴は頭に比べると太めで裾にかけてやや広がっている。肩は角が角張った角肩で肩の山は大きく、その下部から肩上面にかけて赤く塗られている。胴模様は丸い正面菊を二つ重ね、その左右に緑の添え葉を描いている。胴上下の赤ロクロ線の下が色が薄くなっているが、そこが木地の地色。その間の菊花が描かれているやや黒くなった部分には一面の黄色が塗られていたと思われる。保存が良ければ黄胴に赤の菊と緑の葉が鮮やかに映えて何とも華麗なこけしだった想像される。
こちらはやや上方から見たところである。頭頂部の描彩と肩の部分のロクロ線の様子が分かる。頭頂部は相当黒くなっており、赤い水引の形がよく見えないのが残念である。
同時期の盛こけし(右、7寸8分、鼓堂旧蔵品)と並べてみた。共に昭和7年の橘(木形子洞)頒布時の作品で、木地が甘いことから盛雄の木地かとも言われているものである。「高勘」のこけしは丸肩と思い込んでいた若き日の筆者にとって、この角肩のこけしは強烈な印象を与えたものである。丸菊を二つ重ねただけのシンプルな模様が幼げな円らな瞳とよくマッチしていて実に良いこけしだと思う。以前、大正期のこけしが保存完璧で出てきたことがあったが、願わくばこの盛こけしもそのような状態で見てみたいものである。こけしの追及に終わりはないのであろう。
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