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第666夜:大宮正男のこけし

Masaoo_s22_kao 前回の好秋のこけしを気に掛けながらヤフオクを眺めていると他にも気になる遠刈田系のこけしが出品されていた。全体にかなり飴色になっており、色彩も赤以外は殆ど飛んでいて判然としない。しかし、その表情にグッと惹かれてしまった。作者は大宮正男となっている。遠刈田系はあまり力を入れてこなかったので調べてみると、何と好秋の弟子ということが分かり関心が高まった。今夜は、師匠の元にやってきた正男のこけしを見たみよう。

ヤフオクに出ている大宮正男のこけしを調べるためにkokesi wikiで検索すると、何と出品作と全く同じこけしがwikiに載っているではないか…。橘文策の旧蔵品とある。これで俄然、入手に力が入ってしまい、結果的にはかなりの高額になってしまった。

大宮正男は大正12年1月、北海道旭川市の生まれ。昭和3年5歳の時に遠刈田に移って来た。昭和13年に好秋の弟子となって木地修業。昭和19年に応召、終戦後に復員して好秋の工場で半年程働いた後、新地で独立・開業した。その後、木地業に従事して平成15年頃までこけしを製作。平成26年4月26日、92歳で没した。(以上、wikiより)

Masaoo_s22_2men

こちらが今回のこけしである。大きさは6寸3分。胴底には「大宮正男 昭二二.六」の署名がある。典型的な遠刈田系のこけしであるが、頭がかなり角ばっている。好秋の作にここまで角張っているこけしは見かけないが、松之進の正末昭初の作には相当角張っているものがあり、それを引き継いだのであろうか。胴は上下にロクロ線があったようにも見えるが判然としない。胴模様は襟を描き、その下に三段の重ね菊、また襟の両脇には松之進風の横菊を描いている。この辺り、松之進の作風をしっかり引き継いでいると言えるだろう。そして、最大の魅力はその表情。眉目は顔の上方で左右に開いており、その描線には勢いがある。二側目に入れた眼点はやや上寄りで視線は左上方を向いている。頗る格調のある表情になっている。昭和22年と言えば戦後の伝統こけしが最も低調な時期にあたり、その時にこのようなこけしを作っていたことは驚きでもある。しかし、当時の風潮ではこの手のこけしは売れなかったのであろう。やがて、甘い表情で特徴の乏しい遠刈田一般型のこけしに変わってしまう。

Masaoo_s22_hikaku

昨夜の好秋(右)と昭和初期の菊地幸太郎のこけし(左)と並べてみた。ヤフオクでこの正男のこけしを見た時には、この孝太郎のこけしが頭に浮かんだ。表情は良く似ており、孝太郎の古作に匹敵するほどの出来栄えである。これで胴の色彩が残っていればと、何とも惜しまれることである。

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