第678夜:今年は久太郎から…
先日参加した名和コレクションの見学会では、立派な久四郎のこけしを味わうことができた。昨今はヤフオク等も盛んで古品もよく見かけるようになったが、流石に久四郎ともなると簡単には出合わない。そんな中、今年初めて入手したこけしはヤフオクでの久太郎の戦前作となった。署名や書き込み等は無いが、こけし界の大先輩の出品作で「戦前」となっているので間違いはないだろう。小寸の部類に入るようなこけしで、愛らしくも久四郎を思わせる風格のある表情が素晴らしい。
こちらがそのこけし。大きさは3寸7分。直胴で丸頭、小寸としての姿は良い。底は鋸の切り放し。胴模様は菊模様を一杯に描いており、退色が無いために存分に味わえる。そして、頭部の描彩である。髪の毛は前髪と鬢を分けて描いており、小寸のためか頭頂部に水引は描かれていない。この大きさのこけしだと、目は一筆も多く見られるが、本作は二側目。眉は無く、きっちりとした三角形のような目に小さな鼻と点状の口が微笑ましい。頭部は墨だけで描かれているのである。
同じような久太郎のこけしが手元にあり並べてみた(左)。左作はいつのものか分からなかったが、右作が戦前作ということで左もほぼ同時期の作と思われる。大きさは4寸。木地形態は右作とほぼ同じだが頭は縦が短く、頭頂部が平らな平頭に近い。こちらは梅鉢の着物模様。梅は団子梅に近いか…。頭部の描彩も眉の無い眼が右作よりも大きく迫力がある。頭頂部には赤い水引が描かれ、口にも紅が入っているのが右作との違いである。着物模様と菊模様の2種類が揃って楽しみが増した。
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