第679夜:遠刈田の入れ子達磨(佐藤円夫)
先日、同好のSさんから遠刈田の入れ子の達磨を入手したという話を聞いた。誰の作かと尋ねると、秋保の佐藤円夫だと言う。そう言えば10年以上も前になるが、秋保を訪れた折、円夫さんを訪ねて古いこけしの話を聞いたことを思い出した。また、その折、円夫さんの弟の武志さんの所にも寄って入れ子達磨を譲ってもらっていた。遠刈田は昔から入れ子の弁慶や達磨が作られており、それらを作る工人も多い。佐藤兄弟の入れ子達磨を並べて見るのも面白いと思い、貸して頂いた。
こちらがその入れ子達磨5本組である。大きさは一番大きな達磨が丈10cm、径7cmである。胴底には円夫さんの署名と一緒に「初 2006年11月」と書かれており、初めて作った入れ子達磨なのかも知れない。円夫は佐藤武雄の長男で、佐藤三蔵の孫にあたり、秋保の中心的な家系であるが、三蔵、武雄の達磨は見たことが無く、従って、この入れ子達磨が伝統を引き継いだものかどうかは分からない。
こちらは弟の武志の入れ子達磨(第741夜で紹介)。実際には10本組で、この写真の右端の達磨の中に更に5本の達磨が入っている。
兄弟2人の入れ子達磨を比べてみよう。右が円夫作で左が武志作。形は円夫が標準的なもの、武志は胴中に括れを入れて、より達磨っぽくなっている。木地では円夫作は二つに割れる接続部分が、下の胴体部の方が凸になっている(通常はこの形が多いようである)が、武志作は上の頭部分が凸になっているのが分かる。この辺は、工人の作り易さでそうなっているのかも知れない。両者の共通点としては、鼻の描法があげられる。通常の達磨の鼻は下記の栄利作のように写実的なものが多いが、この両者の鼻は下にやや膨らんだ一筆描きの単純なものになっている。
参考に、作田栄利の入れ子達磨5本組を紹介する。
« 第678夜:今年は久太郎から… | トップページ | 第680夜:賑やかさが戻った新年例会 »
「遠刈田系」カテゴリの記事
- 第724夜:友の会11月例会(R6)(2024.11.30)
- 第723夜:高橋林平のこけし(2)(2024.11.21)
- 第721夜:佐藤友晴のこけし(2024.11.17)
- 第716夜:友の会9月例会(R6)(2024.09.23)
- 第714夜:虹色の文助こけし(2024.09.19)
「秋保亜系」カテゴリの記事
- 第696夜:武治の戦前古作(2024.04.21)
- 第695夜:元村コレクション(山尾武治)(2024.04.20)
- 第679夜:遠刈田の入れ子達磨(佐藤円夫)(2024.01.22)
- 第659夜:秋保の古作こけし追及(2023.12.01)
- 第658夜:友の会で入手のこけし(菅原庄七)(2023.11.30)
「ダルマ・木地玩具」カテゴリの記事
- 第728夜:2025年新春!(2025.01.01)
- 第724夜:友の会11月例会(R6)(2024.11.30)
- 第722夜:山形・宮城展(2024.11.19)
- 第713夜:友の会8月例会(R6)(2024.08.26)
- 第707夜:友の会7月例会(R6)(2024.07.29)
「全て」カテゴリの記事
- 第731夜:2025年初入手の古品(宮本永吉)(2025.01.09)
- 第730夜:2025年初入手のこけし(2025.01.08)
- 第729夜:鳴子共通型(2025.01.03)
- 第728夜:2025年新春!(2025.01.01)
- 第727夜:昭二永吉型の逸品(2024.12.30)
コメント