第683夜:中島正のこけし
本ブログも、その1、その2を合わせると1700夜に近づいているが、未だに取り上げられていない工人も多々あるようだ。それらの工人の多くは紹介するに足るようなこけしを持っていないという理由が多いが、持っていても偶々紹介を見送ってしまったものも多いので、気付き次第取り上げて行こうと思う。今夜は肘折の中島正。正のこけしは戦後作を1本持っていただけであったが、先日念願の戦前作を入手することが出来たので紹介しようと思う。口絵写真は戦前作の表情。
中島正は明治40年、秋田県仙北郡の生まれ。大正10年(15歳)、肘折にて佐藤周助の弟子となって木地を学んだ。大正12年、横山木工所の職人となり、周助や巳之助と共に働いた。昭和5年頃、横山木工所が閉鎖となり、正は昭和9年に肘折を出て福島県に移った。昭和14年には佐藤誠が平市で始めた佐藤木工所に勤めたが、20年8月の空襲で焼けて解散となった。その後、佐藤誠と一緒に各地を巡り、28年頃から平市の平木木工所に勤めた。昭和35年に蒐集家の阿久津経之によって見出され、戦後のこけし製作を本格的に再開した。昭和43年ころ脳溢血で倒れ、以後こけしの製作は中止した。昭和60年3月25日没、行年79歳。(以上、kokeshi wikiより抜粋)
こちらのこけし、左は9寸7分。右は8寸。左は胴底に「元肘折 中島正」「昭和14年12月28日入手」の書き込みがある。wikiには同手の作が「昭和7年ころ」と記載されているので、本作も同じ時期のものであろう。頭頂部が扁平で角張った縦長の頭、肩には段があり深い鉋溝が1本入っている。スマートな木地形態である。胴模様は大きな菊花が三段に描かれただけのシンプルなもの。前髪は横に長く、後ろに青点が入っている。頭頂部の手絡は5筆、鬢後ろの飾りは3筆。眉は太く湾曲が大きい。二側の三日月目は切れ長で細い描線は筆致が鋭い。長い垂れ鼻と紅の入った写実的な口が描かれている。眉・目は顔の上部の寄っていて、古武士を思わせる精悍な表情が素晴らしい。
右はwikiに同手の作が載っており「昭和35年ころ」となっているので、本作も同時期のものと思われる。左作と同型のこけしであるが、頭がやや丸くなり、頭に比べて胴が太くなっている。胴模様も筆に強さが無くあっさりした感じになっている。面描では、眉・目の位置が下がり、目も太くやや小さくなって愛らしさが増したおとなしい表情になっている。
戦後作を1本だけ見ていると良いこけしのように思えるが、こうして戦前作と並べてみるとその差は歴然としており、時代の差が浮かび上がってくる。こけしは比較して見ることの大事さが良く分かる。
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