第685夜:らっこ松之進の復元競作
昨年の12月には佐藤康広さんが、また今年の1月には早坂政弘さんが、東京こけし友の会の例会に出席され、その折にらっこコレクションに保存されている佐藤松之進の大寸古作こけしの復元作を持ってきてくれた。康広さんは大学の先生方の科学的な分析・探求に参加されて復元を行った。一方の政弘さんはそれとは別に復元を行ったものであった。そういう経緯の違いはあっても同じ松之進の古作を「原」として二人の工人が同時期に復元を行ったことは興味のあることであった。口絵写真は政弘さんの復元作の表情。
筆者は運良く、友の会例会でこの両工人の復元作を入手することができたので並べて紹介しよう。左が康広作、右が政弘作で大きさは1尺1寸3分。「原」こけしは遠刈田の小寸こげす型を大きくしたような珍しいこけしで明治30年頃のものと云われている。胴の長さはほぼ同じであるが、政弘作は胴下半分がやや太いようで、胴のシルエットとしては康広作の方が「原」に近いようだ。一方、頭は康広作は縦長で、丸い形態の政弘作の方が「原」に近い。
次に表情を見てみよう。政弘作(右)は切れ長の眉・目で「原」にかなり近い表情になっているが、康広作は色々な表情のものがあり、「原」に近いものから本人型のものもあった。本作は目の位置が低く「原」とはやや雰囲気が違うが、なかなか良い表情になっている。
胴模様は殆ど消えかけているものを、何とか想像も加えて再現している。そのため、康広作、政弘作でかなり異なっている。先ず、首の部分は両工人とも赤のロクロ線を引き、その下を紫のロクロ線で締めている。襟は内を赤ロクロ線で描き、その外側に墨で輪郭を描いているが、康広作(左)は輪郭の外側に緑で彩色しているが、政弘作は輪郭の内部を緑で塗っている。胴模様は、胴の左右には花模様を描いているが「原」が朧気であるため、両工人それぞれの感覚で補って描いている。政弘作の方が茎葉も含めて花が大きく華麗に描かれている。また、頭頂の黒髪は政弘作の方が「原」に近く、康広作はかなり下まで伸はしているのが分かる。
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