第692夜:元村コレクション(松田初見)
戦前の昭和10年前後、鳴子では大沼竹雄と松田初見のこけしが店頭に沢山並んでいたと云う。そして両者のこけしは良く似ており、鬢の長さの違いが判別法でもあったそうだ。そんなポピュラーだった二人のこけしが驚くほど残っていない。珍しくないので大事に保存されなかったのかも知れない。今回の元村コレクションでは、工人名は表示されていなかったが初見と思われるこけしが1本出ていた。今夜はそのこけしを紹介しよう。
明治34年生まれの松田初見は、高野幸八の弟子となり大正期からこけしも作っていたようだが、その当時のものは発見されていない。残っているものの中で古いものは昭和8年頃のものでwikiに作例がある。やや縦長の蕪頭に均整の取れた胴を付けており、張りのある表情が素晴らしい。幸八の6寸ロクロ模様こけしと形態に通じるものを感じる。
今回のこけしはこちらである。大きさは6寸6分。wikiのこけしとほぼ同様の作である。<古計志加々美>にも同様の作例があり、そちらは胴模様も本作と同じ牡丹である。幸八を思わせるスマートな木地形態、ざっくりと筆太に描かれた前髪と鬢、眉・目の描線にはアクセントが効いていて力強く、溌溂としている。胴の牡丹模様も赤い花弁はぼってりと筆を置き、緑の茎葉はさらさらと流すように描いている。
このこけしでは、胴の裾部分が一部黒くなっており写真ではよく分からなかったが、木の皮の部分が残っていたようで、そこも巧みに挽いており、まるで象嵌を埋め込んだようで「良い景色」となっている。戦前のこけしには、このように材の状態に合わせて、それを製品の中に上手に取り込んでいるのを良く見かける。
やや後年の作(右:8寸5分)と並べてみた。昭和10年代に入ると、初見のこけしは胴が太くなり、頭も横幅が広がって丸くなってくる。描彩もすっかり手慣れてきて、眉目のアクセントも無くなってしまう。第一次こけしブームの頃の標準的なこけしと言えるのだろう。
本作が出た後、程なくして同じようなこけしが出てきた。右のこけしがそれで、大きさは6寸6分、伊勢こけし会の頒布シールが貼られている。松田忠雄の復元作でS58.6.20の書き込みがある。上手く作られたこけしであるが、やはり戦前作との味わいの違いは如何ともし難い。時代性だけは、どんなに優れた工人でも超えられないものなのであろう。
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