第696夜:武治の戦前古作
昨夜は、元村コレクションのこけしから、山尾武治の昭和15年以前の古作こけしを紹介したが、その続きで別のもう1本の古作こけしを見てみよう。橘文策著「こけしと作者」(第38図)に掲載されている武治のこけしである。数年前に入手したものであるが、保存状態が良くないこともあって、本ブログに掲載することなく日が経ってしまったものである。
こちらがそのこけしである。大きさは8寸2分。「こけしと作者」の発行日から昭和14年以前の作と思われる、胴底のラベルが破損していて日付は分からない。頭の形は昨夜の元村武治と同様に角張っており、面描は筆がやや太くなり、前髪と鬢は細くなり、頭頂部の乙字も小さくなっている。胴はやや太くなって緑のロクロ線は細くなっている。重ね菊左側の先頭花弁の縦流れも描かれていることから、昭和10年代前半か…。
改めて、並べてみよう。本作では胴の描彩に特徴がある。それは最下段の重ね菊の下、ロクロ線との間に3筆の山形の模様が描かれていることである。これは添え葉か土玻なのであろうか。なお、この模様はらっこコレクションや「撰」(吉田大五郎著)にも見られる。
もう一点。本作では胴模様の最上段の重ね菊の部分を削って、そこに「秋保温泉」の印を押しており、当時の温泉土産として売られていたことが垣間見られて興味深い。
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