第702夜:再会なった粂松こけし
こちらも最近コレクションの仲間に加わった佐久間粂松のこけし。粂松も昨夜の今三郎同様、残るこけしは昭和15~18年の3年程で作品は少ない。国恵志堂にはこれまで袖珍こけしが1本あるだけで、定寸の本格的な作品は初めてである。この粂松の位置づけはどの辺りかと文献等で探ったが判然としない。そんな中、一昨日、「ひやね」から「解説 無物庵所縁のこけし達 県談」が送られてきた。口絵写真は粂松こけしの表情…
この解説書は2年程前に発行された谷川茂氏の図録「無物庵所縁のこけし達」に掲載されているこけしについて解説したもので、箕輪新一氏と橋本正明氏を中心に谷川氏も加わって纏められたものである。図録は戦後作中心の第一集と戦前の古品からなる第二集の2冊構成であり、特に707本の古品を載せた第二集はこけしマニア垂涎の一冊である。今回の解説はこの第二集掲載の古品を綿密に鑑賞して、こけし界の重鎮お二人が論評を加えたもので、図録の鑑賞に大いに役立つものと思われる。
さて、こちらが今回のこけしである。大きさは8寸6分。紡錘形の頭に、下部が緩い膨らみの三角胴。多彩な形態がある粂松こけしの中でも堂々として存在感のあるこけしである。胴模様は中央部に赤・緑・黄(橙色)の花模様を配し、その上下にやはり赤・緑・黄(橙色)のロクロ線を引いている。特に花模様直下の赤ロクロ線は太く波打っており、アクセントになっている。
頭部は太い黒のロクロ線の外側に細い3本の黒ロクロ線を添え、そこから左右に大きな太い前髪を描いている。カセは前髪の根本から小さな2重の円を描き、前髪の先頭部からは左右にくねった赤線を大きく長く引いている。内側と外側のカセの間には何も描かれていない。
太い鬢は下部が外側に開き、眉も太く勢いがある。一方、目は細い面相筆で小さく描かれているが、上に凸の瞼は下が長く伸び、そこにかすかな眼点を打って、得も言われぬ味わいを醸し出しており、見れば見るほど引き込まれてしまう。U字形の鼻は大きく、やや太目の三筆の口には紅が大きく打たれている。
さて、前述の谷川氏の図録には粂松のこけしが(11)~(23)まで13本載っており、その中の(12)が本作と同手の作品であった。そして、その解説では『・12は細い目に印象的な眼点が入り、浮世絵風な面描が凄さを感じさせる/・12と21は昭和14年作と思われる』とある。数ある粂松こけしの中でも第一級のものと言ってよいだろう。
追伸)この粂松こけし、後で気付いたのであるが、平成29年にある蒐集家の古品を見せて貰いに行った時に、その場にあったのである。その折には、何本かの古品を譲って貰ったのであるが、この粂松は金額的に断念したものであった。
こちらが、その時の写真である。
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