第700夜:念願の今三郎
今夜で、この千夜一夜(2)も7合目までやってきたことになる。この(2)の始まりは2015年6月なので、ほぼ9年間を要したことになる。千夜一夜(1)が9年間で完遂したことを思うと、良く頑張っていると言ってよいだろう。国恵志堂コレクションはあらゆるこけしを満遍なく集めている訳ではないので、1本も持っていない工人も多い。後期高齢者入りを目前にして、こけしの終活も見据えている昨今、そのような工人の作を入手することに戸惑いは隠せないが、まだまだ、こけしの魅力に負けてコレクションは増えている。今夜は、最近新たに仲間入りをした佐藤今三郎のこけしを紹介しよう。
弥治郎系幸太系列の中心工人である佐藤今三郎は幸太の長男で明治22年の生まれ。幸太について木地の修業を行い、農業や製炭業も行いながら木地業も続けていた。16歳の時に木から落ちて胸を痛めてからは病気がちとなり、木地挽きもあまり行っていなかったようで、現在残るこけしも昭和13年以降のもので、多くはない。
そんなこともあって、これまでこれはという今三郎には出会う機会がなかった。先日紹介された今三郎は表情が良く、保存状態も良好なため、譲って頂くことにした。
こちらがそのこけしである。大きさは9寸9分。頭はゆるい嵌め込みとなっており、クラクラと回すことができる。これは弥治郎の古いこけしに見られる様式であり、玩具っぽい感じがして好ましい。首には細いが赤い襟巻きが付いている。胴は首下から裾にかけて僅かな膨らみを持ちながら広がっており、安定感がある。胴模様は中央部には赤の太い2本のロクロ線を中心に緑の細いロクロ線が多数引かれ、紫のやや細いロクロ線が1本引かれて絶妙なアクセントとなっている。胴上部には赤で襟を描き、胴下部には旭菊が大きく描かれている。旭菊の上部に添えられた緑の模様は何だろう?
頭頂部のベレー状のロクロ線は、赤と緑を交互に配し、外縁部は紫で締めている。弥治郎こけしのこの紫のベレーは退色し易いためか後年になると黒に変わってしまうことも多いが、やはり紫色に拘りたい。ベレーの外側に髪は描かれていない。顔の描彩は、赤と緑の半円の前髪飾り、鬢には5筆の太い赤鬢飾りと2筆の緑模様とシンプル。中央に寄った眉、目鼻と口は端正で穏やかな中にも本家の風格が感じられる。流石に「今三郎」と言えるこけしである。
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