第699夜:湯田初期の丑蔵こけし
佐藤丑蔵のこけしと言うと「湯田時代」という言葉が欠かせない。kokeshi wikiに拠れば、大正10年に湯田で開催された木地講習会の講師として招かれ、その後、小林辻右衛門が作った木地工場の指導員として湯田に残った時から始まり、昭和17年に盛岡市にある県の職業補導所へ勤めることなるまでの期間を言うようだ。それ以前の遠刈田、肘折時代の作品は判然としない。天江コレクションの正末・昭初のこけしは「フランケン」等を呼ばれ肘折の風土性を色濃く残した作品となっている。今回はそれ以降、湯田初期の丑蔵こけしである。
こちらが今回のこけしである。大きさは6寸5分。第683夜で紹介した中島正などと一緒に出品されていたもので、退色の割には出品価が高かったためか最初は応札が無く、再出品では出品価が半額になっていたものである。wikiにも同手のもの(昭和5年)が載っており、湯田初期と思われたので入手したものである。
縦長の角張った頭に細身の直胴を付けたスタイリッシュな形態で、胴上下には遠刈田系の古作に見られる紫の2本のロクロ線を締め、その間には大振りな4段の重ね菊を描いている。前髪と鬢は細筆を重ねて描き、頭頂部には赤点とそこから後方に赤い手絡が伸びる。赤点の後ろと手絡の先に緑の模様が描かれる。眉と目は角張った山形で湾曲は少なく鋭角的で、左右がくっ付きそうになるくらい近い。鼻は浅い猫鼻、口は墨2筆に紅を差している。端正な中にもおっとりとした雰囲気をもった表情が何とも言えない。
これと殆ど同手の作が「らっこコレクション図譜」の346番に載っている。大きさは7寸2分であるが、形態、描彩ともほぼ同じで昭和8年とある。保存はとても良く色彩も鮮明である。そのため本作では色飛びして判然としない最下段の菊花には縦に流れる緑の茎が描かれていることが分かったのである。
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