第714夜:虹色の文助こけし
国恵志堂にとって佐藤文助のこけしは縁遠いこけしの一つであった。筆者がこけしを集め始めた昭和40年代後半、文助のこけしは丑蔵とともに遠刈田で人気絶頂のものであり、入手は困難であった。しかも戦後の文助こけしは人気とは裏腹に甘さばかりが目立つものとなっており、入手する意欲もあまり湧かなかった。その後、古品に興味を持つようになり、戦前の文助を写真等で見ることで文助に対する想いは静かに深まっていった。念願の文助古品を入手したのは平成も終わりに近づいた頃で文助39歳の逸品であった(第86夜参照)。今夜は、それとは雰囲気の異なる40歳作を紹介しよう。
文助のこけしと言えば、カラフルなロクロ線を身体に纏った作品が頭に浮かぶ。先日のヤフオクには正にそのような文助こけしが出品されていた。どこかで見たような気がしたが思い出さない内に締め切りを迎え、入手することが出来た。あとで調べてみると「都築コレクション」の中の1本であることが分かった。
こちらがそのこけしである。大きさは8寸。胴底には文助の署名と40歳と書かれている。赤、黄、緑、紫の等間隔に並んだロクロの帯が実にカラフルで目を惹きつける。退色が全くと言ってよいほど無いのが嬉しい。前所有者に感謝である。面描はしっかりした筆致で描かれ、黒目が大きく、しっとりとした色気を感じる美人こけしである。文助古品の中でも第一級の作と云えるだろう。
第86夜の39歳作(左)と並べてみた。たった1年しか違っていないのに、その作風が大きく変わっているのがよく分かる。木地形態では39歳に比べて頭がやや縦長となり、胴もやや太くなったようだ。面描では39歳作は筆致鋭く眉目の湾曲が大きい。眼点が小さいため視線鋭く、溌溂として若々しい表情である。一方、40歳作では全体に筆致が太くなり、おっとりとして落ち着いた風情の年長の乙女に成長している。文助の優れた感性を示す好対照の2本と言って良いだろう。
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