第721夜:佐藤友晴のこけし
こけし収集歴が半世紀を超え、それなりに所蔵品も増えてきたが、まだまだ持っていないこけしも多々ある。遠刈田系の佐藤友晴のこけしもその一つである。佐藤友晴という名前は勿論知っていたが、所蔵したいと思うような作に出会わなかったからでもある。松之進の四男である友晴のこけし製作歴は昭和14年から16年の2年余り。短い期間の割には残っている作品はそれなりにあるようだ。先月、ヤフオクに出た友晴のこけしはなかなか良い表情をしており、価格もほどほどで入手できた。今夜はそのこけしを紹介しよう。
本ブログに載せるにあたり、改めて文献で友晴を調べてみた。「木の花」第拾参号に矢内謙次氏が「-新地のインテリ工人-佐藤友晴」という一文を載せており、そこには友晴のこけしが15本載っている。その中の1本⑧が今回のこけしであることが分かった。久松旧蔵品ということになる。
こちらがそのこけしである。大きさは8寸2分。全体的にやや古色が付いているが、退色は無く保存状態は良い。胴底には「遠刈田 佐藤友晴 二十五才」の署名と「昭十五・九」の書き込みがある。矢内氏の解説によれば「昭和15年春より秋頃迄は菅野氏の依頼で、木地業に関する聞き書き、研究を熱心に行っていた時期で、蒐集界に人気が出て、こけしも大量に作り、最も安定した作行を示している。」とある。その評の如く、本作は溌溂とした湾曲の大きな眉目が素晴らしく、胴の枝梅の描彩も面白い。友晴の代表作に挙げても良いだろう。
友晴こけしを俯瞰すると、昭和14年のこけしは丸頭にやや肩の張った胴を付け、眉目は湾曲が少なく松之進譲りの剛直な感じのこけしである。15年中頃になると頭は縦長となり肩も丸みを帯びてくる。眉目は湾曲が大きくなり、明敏な表情が魅力的なこけしとなる。しかし15年も末になると直助に傾倒して頭は角張り眉目の湾曲は少なくなる。そして16年春の頃にはwikiに作例があるように、目尻が下がって生気が感じられないこけしになったしまった。その後はこけしから離れ、応召後には病を患って昭和21年1月4日、31歳の若さで夭折してしまった。
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