第727夜:昭二永吉型の逸品
国恵志堂は鳴子系のこけしには特に力を入れており、なるべく多くの工人の作を集めている。しかし戦前の工人のものでは未だ所蔵に至らないものもある。庄司永吉のこけしもその一つである。永吉のこけしは櫻井家が継いでおり、特に昭二の作品には魅かれるものが多い。中でも初期の作と42年頃の細胴の作には秀作が多い。2週間程前にヤフオクに出品された永吉型は初期のものの中でもピークと思われる作で頑張って入手した。今夜はそのこけしを紹介する。
こちらがそのこけしである。大きさは1尺。胴底には「友の会 36.4.10」との書き込みがあり、昭和36年、友の会で頒布されたこけしと思われる。頭部にやや日焼けが見られるが、胴は「白いもち肌」のままで保存状態は良い。頭は頭頂部が平たい蕪形、胴は肩の山が低く肩部には深い鉋溝が1本入っている。岩太郎から継承したと思われる木地形態はシンプルかつ豪快で美しい。鉋溝の上には赤い投げ筆が描かれ、写実的に描かれた胴模様は下部に正面菊を、上部には3つの横菊と1つの小花を丁寧に描き、その間を緑の茎葉で繋いでいる。個々の花と葉は小振りに描かれているが、白い木地に余白を残して秀逸である。そして一番の見どころは表情であろう。顔の各パーツを顔上部に集めて集中度を高め、眉と目は太く外上がりで鋭い表情を醸し出している。
初期の永吉型を4本並べてみた。左は35年8月で最初期のもの、2番目はやや後のもので3番目の本作に近い。右は37年1月の書き込みがある。この辺りの作が、昭二永吉型の優作と言えるだろう。その中でも本作はそのピークと言って良いだろう。
上記4本の胴底の署名である。千夜一夜(1)の第59夜でも書いたが、この35~36年の作では、「昭二作」の「乍」の縦棒が後ろに跳ねるのが特徴である。右のように37年以降になると、縦棒の跳ねは無くなり、作風もやや変わってくるようだ。昭二の初期永吉型を求めるなら、この署名も参考になるだろう。
今年もあと1日となった。本ブログも今夜で今年を締めるのであるが、この1年間で57夜しか進めることが出来なかった。来年は何とか100夜は増やしたいと思っている。引き続き、よろしくお願いいたします!
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岩蔵型といい、永吉型といい、桜井昭二さんは本当にクオリティの高い復元型を
作っておられました。又、息子の昭寛さんもお父さんに負けずに劣らない岩蔵型や
永吉型を作られておりますね。いつまでも元気で頑張って欲しいです。
最後になりますが、今年も一年間、面白い話をありがとうございた、よいお年を・・。
投稿: 益子 高 | 2024年12月30日 (月) 19時05分
益子 高 さま
今年もありがとうございました。
先日、山河之響会で昭寛さんとお会いしましたが、
意欲的なお話を聞き期待が持てました。
それでは、良いお年を!
投稿: 国恵 | 2024年12月31日 (火) 13時36分