第736夜:「伝統こけし会」頒布(佐藤伝喜)
年が明けて今日が1月最後の日となる。今月もヤフオクを中心に20本程のこけしを入手した。2週間程前、ヤフオクに保存極美のこけしが出品されていた。佐藤伝喜の33年7月作である。伝喜の復活初期の作品はかなり集めており、早速飛びついてしまった。送られてきたこけしは専用の箱に入っており、頒布会(「伝統こけし会」)の解説書も同封されていた。今夜は入手した伝喜こけしとその頒布会について紹介しよう。口絵写真はその伝喜こけしの表情である。
筆者は迂闊にもこの頒布会について知らなかった。この「伝統こけし会」は大阪の郷土名産民芸品振興会が行った頒布会で、落札こけしに添付されていた資料によると、昭和30年代前半に実施されておりかなりの回数を数えている。ちなみに今回の佐藤伝喜の頒布はその第27回にあたる。ヤフオクにはその頒布会の頒布こけしが20本程出ていたが、入手したのは2本だけで他は見過ごしてしまった。
こちらが頒布こけしで、箱と解説書に弥治郎こけしの説明書も付いた完品である。付属品も昭和30年代前半の物であり有難い。
こちらが、頒布品の伝喜こけしである。大きさは5寸9分。昭和33年7月、48才の署名がある。先ずは出来立てのような保存の良さを見て頂きたい。頒布品はそのままの状態で仕舞い込まれていたのであろう。頒布解説によると、頒布会の方が33年6月に東京こけし友の会の例会に参加した折、会場に伝喜のこけし(6月作)が出ているのを見て伝喜復活の話を聞き、予定を変更して7月の頒布にしたとのことである。
さて、国恵志堂には7月の伝喜作が1本あったので並べてみた。右6寸がそれである。胴底の署名見ると全く同じであり、いずれも頒布会の印(丸に伝)が押されていることから、右も頒布品と思われる。同様の作であるが、胴中のロクロ線の配色と本数が異なることから、伝喜はその辺りに変化を付けて作っていたことが窺われる。
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