第729夜:鳴子共通型
正月恒例の箱根駅伝は青山学院大の連覇で終わった。駅伝3冠を狙った国学院大は3位となり箱根の難しさを痛感させた戦いでもあった。さて728夜では昨年末にヤフオクで入手した10本組の話をしたが、今夜は同時に入手した別の10本組のこけしについての話である。その中には鳴子系のこけしが4本入っており、その内の2本は単品では入手することはないものであり、こけし界でも殆ど触れられないものなので、紹介してみたいと思う。口絵写真は同時に入手した佐藤護の戦前作の表情。
こちらが10本組のうちの5本で、左から斎藤弘道(S34.11.1)、 佐藤護(戦前、38才)、小掠久太郎、鳴子系2本。他の5本は、佐藤三蔵、大原正吉、阿部広史、岡崎仁治、秋山忠市である。弘道、護、久太郎は欲しかったものである。
さて、戦後の昭和20年代から30年代にかけて、鳴子では戦前から引き継がれた工人とは別に、温泉みやげとしてのこけしを作る工人が多数生まれた。それらの工人は伝統的な工人について修業したものではなく、見取り学問としてこけしを作っており、特色の無い同じようなものであった。このようなこけしは「鳴子共通型」と呼ばれて、蒐集界からは殆ど注目されないものであった。今回の2本がこの共通型に入る工人のものであったが、見どころのあるものだったので取り上げた。
こちらは、小沢孝雄のこけしである(左は新兵衛作)。孝雄は大沼純の弟子であるが、純は元々土産物店の店主であったが、こけしに興味を持ち、大沼新兵衛に指導を受けて見取りでこけしを作っていた。しかし一般に知られる純のこけしは胴の反りが極端に大きなもの(wiki参照)であり、孝雄のこけしもそれに準ずるものと思っていた。ところが、本作はそれとは異なり、上の写真のように新兵衛に近い風情を持っているのである。第123夜には友の会例会で展示された純と孝雄のこけしが載っており、その中の純のこけしは、孝雄の本作と同手の作であることが分かり、新兵衛-純-孝雄の関係性が見て取れて興味深い。
こちらは、渋谷安治のこけしである。安治は鳴子の及川商店の職人で、木地は佐藤俊雄に習ったが、こけしは見取り学問で伝統的なものを継承したものではなかった。しかしwikiでは「安治のこけしはそのころの若手工人にはめずらしく、機械的な描彩ではなく、甘みの少ない古雅な表情をもつこけしであった。一部の収集家からは注目されていたが、まもなく転業した。」と記載されている。本作はwiki掲載の写真と同手であり、しかも18才とあることから初期のものと思われる。収集家には注目されても一般客にはあまり売れず、転業したものと思われる。
手元にある佐藤俊雄とその師匠である大沼新兵衛のこけしと比べて見た。左から新兵衛、俊雄、安治。こうして並べてみると共通型に分類された安治のこけしも、この18才の時点では頭部の前髪、水引、鬢飾り、また胴模様も俊雄(新兵衛)の様式を継承していたことが分かる。今回の共通型2本(孝雄と安治)もその元を辿れば新兵衛に繋がっており、当時の共通型の工人に対して新兵衛の影響が大きかったことが伺われるのである
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明けましておめでとうございます、今年も面白い話を期待していますので、宜しくお願いします。
投稿: 益子 高 | 2025年1月 3日 (金) 19時53分
益子 高 様
明けましておめでとうございます!
今年も頑張って掲載を続けて行きます。
よろしくお願いいたします。
投稿: 国恵 | 2025年1月 6日 (月) 15時04分