第739夜:吉兵衛のこけし
こけしの終活も考えねばと思いつつ、まだまだ所有欲には負けてしまう。最近は古品がヤフオクによく出るようになり、持っていないものが出てくるとつい手が出てしまう。今年に入ってからでも既に何本かがコレクションに加わっている。山形の小林兄弟のなかで吉兵衛のこけしは持っておらず、市場ではなかなか見かけないが、先日のヤフオクで小寸ながら状態の良いものが出たので迷わず入手した。今夜はそのこけしの紹介である。口絵写真はその表情。
小林吉兵衛は明治9年7月、山形市八日町の生まれで、倉治の三男である。寺小屋式の南山学校を卒業後、2年間ほど新聞の植字係をした後、倉治のもとで木地修業を始めた。明治36年に結婚し、翌37年に旅籠町に分家して独立・開業した。その後5,6年して材木町に移って木地業を続けた。こけしは倉治のもとで既に作っていたが、大正中期よりハッカ入れ専門となり、こけしは作らなくなった。昭和12,3年頃から復活、18年頃迄の作品が残っている。昭和31年8月11日逝去、71歳。
こちらが今回のこけし。大きさは4寸4分、胴底に66才の書き込みがあり、昭和16,7年頃の作か。小寸ということもあって、肩には段があり、白胴の上下に3本ずつの鉋溝が入った小林家の古い様式である。胴模様は4弁の梅を流れるように描いて熟練の技を示している。吉兵衛こけしの見所は倉治から「瓜ざね顔」と言われた顔の表情であろう。特に長い上瞼と短い下瞼を重ねるように接して描き、間に眼点を入れた描法には惹きつけられる。両瞼の湾曲は僅かで水平に近い。接近した両目の間を割れ鼻が突き抜けている。枯淡でとぼけたような表情には情味があり、見るものの心を落ち着かせる。
吉兵衛は昭和16年頃より長岡幸吉の所に通ってこけしを作っていたそうで、その頃のこけしは胴が太くなっていると云う。7,8寸で胴上下に赤と緑のロクロ線を配した吉兵衛こけしと並べてみたいものである。
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