第740夜:妖しい大亀ついに登場!
前髪を三又に分けた大葉亀之進の戦前のこけしは、筆者が注目しているものの一つである。その残るこけしは昨夜紹介の小林吉兵衛より更に少ないと思われる。その戦前の亀之進のこけしは2本持っているがいずれも一側目のものであり、二側目のものは垂涎の的であった。その二側目が出たのだから食い付いてしまうのは当然のこと。今夜はその亀之進のこけしを紹介する。口絵写真はその迫力の表情である。
戦前の亀之進こけしについては、第922夜(千夜一夜①)と第525夜で紹介している。いずれも昭和17年頃の作で瞳の大きな一側目、明るい表情のこけしである。一方、kokeshi wikiには昭和16年の二側目のこけしが載っており、その迫力の表情には大きな魅力を感じていた。
こちらが今回の亀之進こけしである。大きさは5寸6分。胴底の印から米浪旧蔵品と思われる。縦長の角張った頭、胴は肩の張った直胴で畳付きの部分が台状に広がっている。これは倒れ難くさせるためであろうか。
wiki掲載の西田コレクションの亀之進(左)と比べてみよう。西田亀之進は大きさが7寸3分である。先ず形態は、西田手は頭、胴ともにやや太目で全体的にずんぐりした形である。それに比べ本作は、頭、胴とも細身でスマートになっている。胴模様はともに三段の重ね菊であるが、西田手では菊の花弁が畳付きまで描かれており、その下には添え葉が描かれていない点が本作と異なる。
次に顔の表情を比べてみよう。頭は西田手の方がやや短いようだ。前髪は本作のほうが大きくなっており、その後ろには両方とも青点が描かれている。西田手は鬢がやや内側に入っていてその分顔の面積も狭くなり、眉・目も中央に寄って引き締まった凛々しい表情となっている。一方、本作では鬢が外に広がり、眉・目もやや左右に離れている。また頭がやや長いせいか眉・目と鼻・口とが離れていて馬ずらっぽい。眉はやや太いが、上下の瞼の描線は細く睨むような眼点は迫力があり、大きな赤い口ともども妖しい雰囲気を醸し出している。木地形態、描彩の特徴から、本作は西田手より新しく17年の初め頃の作であろうか…。
手持ちの戦前亀之進3本を並べてみた。右2本は胴の形、面描の特徴から製作時期は近く、左はそれよりやや早いのではないかと推測される。
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