第747夜:藤の花と巳之助
一昨昨日(5/1)、栃木の「あしかがフラワーパーク」に藤の花を見に行ってきた。あしかがフラワーパークには新駅ができる前に何度か行ったことがあったが、駅から近くなりライトアップも楽しめるようになったので出掛けたのである。GWの中間の平日のためもあってか大混雑という訳ではなかったが、インバウンド(特に東南アジア)の観光客が目立った。天気にも恵まれ、藤を始め満開の花々を満喫することができた。
メインの藤の花はよく知られている藤色(紫)以外にも、薄紅色、白色、黄色などがあり、咲く時期に多少のズレがあるようだ。また同じ藤色でも薄い物と濃い物があり、花も長く垂れさがるものから、ブドウのように房状の八重藤などもある。他に、ツツジやシャクナゲ、バラなどが園内に見事な配置で植えられており、育てている方々の苦労が偲ばれる。
こちらは、日中の状態。左から、棚から垂れる紫藤の群落と周囲の花々。中央は、白藤のトンネルで中を歩くと甘美な香りに包まれる。右は園内の遠望、道の左手には藤を始めとする各種の花々が咲き乱れ、右手には池が広がっている。
こちらは、ライトアップ後の状態。灯りが付くのは辺りが暗くなる18時半頃になってから。帰りの電車の時間から19時には園を出なければならず、ゆっくりライトアップを満喫できなかったのが残念だった。左から、下からの照明に赤く光る藤の花。中央は、名物の「大藤」にライトが点いて上が紫、下がピンクのグラデーションに変わったところ。右は辺りが暗くなり照明が一段と明るく輝いている。
さて、この旅には1本のこけしを持って行った。ヤフオクで落札し、前日届いたばかりの巳之助のこけしである。昭和30年代前半の巳之助であるが、妙に魅かれるものがあって競り合いを勝ち抜いたものである。
こちらがそのこけしである。大きさは6寸、周助昭和型である。ところが届いてから千夜一夜(1)を見てみると第322夜に同手の巳之助こけしが載っているではないか…。そこでは前髪が大きく温和で温かみのあるこけしと評している。このこけしはその後手放してしまったようで手元には無い。残しておくほどには大事に思っていなかったのだろう。今回の巳之助の見所は何といっても表情。そこで両者の表情を比べてみた。
こちらがそれである。左が322夜のもの、右が今回のもの。いかがであろうか。ほぼ同時期に作ったものと思われるが、表情の違いは歴然である。先ず木地の形が、左は顎の部分がやや下膨れなのに対し、右はやや窄まり気味。また、前髪から繋がった両鬢の間隔が左はやや広めだが、右はやや狭い。そして一番の違いは左目の描彩で、左は両目とも同じに描かれているが、右では上下の瞼が尻上りになっており上瞼の目尻が下瞼と繋がっている。そのためか左目の眼点が中央に寄って鋭い表情になっているのである。また、口の開きも右は小さく引き締まっている。このようにちょっとした筆致の違いなのであろうが受ける感じは大きく異なるのである。後年、「たつみ」の指導で巳之助の周助型は各段に向上するのであるが、本こけしにはその片鱗が窺えるのである。こけしの表情の奥深さは果てしないものがあり、そこが愛好家を惹きつけて止まないのであろう。
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