第748夜:秋田(本荘)時代の盛こけし
4月の友の会例会では、入札品の中に黄色く塗った胴に緑の茎葉と赤い菊花が鮮やかに映えた鳴子のこけしが出品されていた。「高勘」ラブの筆者にとっては気になる1本であったが、胴底には「秋田こけ?」と「22.8.26」の書き込みがあった。秋田に居た高橋盛が終戦とともに乞われて本荘に移り鳴子に帰る前年ということになる。本荘時代の盛こけしは明確ではなく、描彩については皆川たみ子と言われているものが多い。本こけしでその辺りを探ってみよう。口絵写真はその表情である。
こちらが今回のこけしである。大きさは6寸。本こけしを見た時点で感じたのは、木地は盛か本荘の由利木工所の工人(皆川元一、佐々木久作、子野日幸助)または福寿、胴模様は盛、面描はたみ子らしいということであった。そこで持ち帰って秋田時代、鳴子に戻って直ぐの盛こけしと比べてみることにした。
こちらの3本、左から8寸(S16.11.13 )、6寸(S22.8.26)、6寸2分(S23.11.24)の書き込みがある。昭和16年の時点では本荘の工人は未だ盛から木地・描彩を習っていないので、左の面描がたみ子でないことは確かである。
3本の表情を比べてみよう。細い眉、左右に開いた目、小さい眼点など共通点は多い。真ん中がたみ子だとすると、左の盛を良く写している思う。これなら盛と言われても頷ける出来栄えだ。しかし、こうして3本並べてみると、真ん中のこけしが一番愛らしく(別の見方をすると、目力が弱い)見え、女性の描彩と言うのがしっくりする。
頭頂部の描彩も見てみよう。前髪を束ねて後ろに垂らした二筆の黒髪、盛は頭頂部を横切って長く伸びるのが特徴であるが、真ん中のこけしは短く筆致が異なる。この点もたみ子を思わせる描彩である。
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