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第750夜:けさの型のこけし

Kesano_d6_yoshikazu_kao 昨夜は大沼けさののこけしについて紹介したが、今夜はけさの型のこけしについて見てみよう。筆者が福寿こけしを求めて鳴子に通っていた昭和40年代後半以降でも、福寿さんのけさの型のこけしは見たことも聞いたこともなかった。写真集などでけさののこけしを認識し、その型らしいこけしを見たのは柿澤是隆さんが最初であった。当時「高勘」系の双璧と言われた滝島茂さんにはそれらしいこけしは無かったように思う。口絵写真は義一さんのけさの型の表情。

けさののこけしとしては、<鳴子・こけし・工人>に掲載されている米浪氏蔵Bの8寸が保存も良く有名である。また、同じく米浪氏蔵Dの6寸2本の内、石竹と思われる珍しい胴模様のものも知られている。従って、現在作られているけさのの復元作は、それらが中心である。昨夜紹介した楓模様のものは作られていないと思われる。

ところで、「福寿物語」を纏めていた時に見慣れない胴模様の福寿こけし(普通型)を見つけた。

Kesano_fukujyu_hikaku

こちらがそのこけしである。写真左の2本は義一作けさの型(左)と福寿作(右)で、米浪Bの胴模様である。義一作はけさのこけしを忠実に写したものであるが、福寿作は普通型であるが胴模様はけさのと同じ菊模様を斜めの方向を逆にして描いたものである。また写真右の2本はけさの作(左)と福寿作(右)で、楓模様であるがいずれも葉先が7つに分かれている(通常は5つ)のである。この2本の福寿作のこけしは昭和38年頃に作られたものであるが、この様式の菊と楓の模様はこの時期以外のこけしでは見た事がない。そのため、福寿さんはこの頃けさののこけしを見る機会があり、それを普通型のこけしに描いたのではないかと推測される。

Kesano_b8_hikaku

こちらは、米浪B型の復元作である。左は柿澤是隆作、8寸。製作時期は分からないが、目が二重になっているなど忠実な写しにはなっていない。真ん中は義一作、8寸。平成18年12月に神田ひやねで開催された義一個展で入手したもの。細部まで原こけしに忠実に作られている。右は是伸作、8寸。令和5年3月に千葉そごうで求めたもの。原をかなり研究して作られているが、頭頂部の水引など未消化な部分も残る。是伸さんは今年3月の千葉そごうで原こけしを直接見ており、その成果が期待される。

Kesano_d6_yoshikazu_hikaku

こちらは、米浪D型の復元作である。左は義一作5寸8分。平成18年の義一個展で求めたもの。頭の形や面描など、原を相当研究して作られたものだろう。特に一筆目のように見える一側目を上手く表現している。真ん中は昨夜紹介のけさのこけし。右は是伸作5寸9分(平成24年)。目は一筆目であり、頭頂部の水引も是伸自身の描彩になっている。原作では2本の鉋溝がかなり深く入っているが、義一作、是伸作とも鉋溝は浅く迫力に欠ける。「高勘」系のこけしは鉋溝が殆どないため慣れていないのだろう…

 

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