第766夜:希三の極美えじこ
戦前の古品は古色が付いて飴色になり彩色も飛んでしまっているという定説は過去のものになったようだ。その最たるものは今から10年程前にヤフオクに出品された古品群で、約1年間に都合4回で計200本余りを数えた。内容は大正期から昭和初期のこけしが大半で、その多くが作りたてのような極美の保存状態で出品されたのである。今回の希三のえじこもそのような極美のものであり、勇んで入札に参加した。口絵写真はその表情である。
大沼希三の戦前のこけしは古風なものから洗練されたものまで変化があり、筆者の好きなこけしで精力的に集めてきた。今回のえじこは整った表情のものであるが、えじこは持っていなかったので入手した。出品写真でもその保存の良さは見て取れたが、手元に届いたえじこは黄色く塗られた胴に赤と緑の菊花が鮮やかに描かれており、大満足の1品となった。
こちらがそのえじこである。大きさは、径8.5cm、高さ11cmである。最近ヤフオクに纏めて出品されている舟山旧蔵品である。胴には一面に黄色が塗られ、胴上下と肩の山には赤と緑のロクロ線が引かれている。胴模様は前面に横菊、裏面に旭菊が大きく描かれている。面描は丁寧に描かれ端正な表情となっている。昭和10年代のものを、このように素晴らしい状態で見ることが出来るのは嬉しいことであり、前所有者に感謝したい。
手元にある2本の希三の戦前作と雰囲気が似ているので、都築コレクションの写真を見てみると、何とそこにこのえじこが載っているではないか…。そこでその3本を並べてみた(都築コレクションの写真には他に4寸程のこけしが1本載って入る)。従って、この3本は元々は都築コレクションとして一緒にあったものが、別々になって時が経ち、今また一緒になった訳である。写真から、都築コレクションの時には同じような保存状態だったと思われる。それから時が経ち、現状では真ん中の1本はかなり劣化が進み、右はそれ程でもないが本えじこ程の鮮やかさはなくなっている。それぞれのこけしがどのような経過をたどったのかが偲ばれる。
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