第792夜:高橋市太郎と定雄の写し
戦後の新型こけしの隆盛から伝統こけしの復活を目指して、復元(写し)の製作が盛んになったのは昭和30年代に入ってからである。昭和27年の高橋盛・福寿による勘治型、同31年の岡崎幾雄による栄治郎型の製作がその先駆けであった。以来、この復元品がコンクールでも上位入賞を受けることが多く、今でも多く作られている。復元こけしを手にすると、その元になるこけし(原)が知りたくなり、出来れば手に入れたと思うのはコレクターの性とも言えるであろう。今夜は先日入手した高橋市太郎のこけしと小林定雄のこけしを紹介しよう。
先ずは、高橋市太郎についてkokeshi wikiで勉強しておこう。市太郎は明治42年、岩手県和賀郡沢内村猿橋 の生まれ。昭和元年より湯田の佐藤丑蔵について木地修業を行った。昭和5年に結婚後に入隊、昭和7年に除隊した後は製炭などに従事しながら木地を挽いた。 この時期には一時及位の佐藤文六の工場(及位木工所)で働いた。昭和11年の〈木形子異報・9〉で石井眞之助により作者として紹介され、その後、注文によりこけしも作った。昭和27年12月16日没、行年44歳。
市太郎のこけしはそれほど多くは残っていないようで、初期には丑蔵に倣ったフランケンのようなものを作っていたが、その後は独自の型を作り上げた。こちらは友の会の「こけし談話会」に持ち寄られたものである。独自型では胴を頭に差し込む様式で首が長い。胴には三段の重ね菊を描いている。下瞼が水平で表情の鋭いA型と下瞼が下に膨らんだ愛らしい表情で、下部に紫ロクロ線が入ったB型に分けられるようだ。
こちらが今回のこけしである。大きさは8寸、胴底は刳り貫いてあり、胴裏に「高橋市太郎」の印が押されている。胴底のラベルから、昭和16年5月14日、三越で入手されたものと思われる。下瞼が下に膨らんで円らな瞳のB型にあたる。戦前作とは思えないほど保存が良く、色彩もほぼ完全に残っている。
以前入手した小林定雄の市太郎型(右、7寸1分)と並べてみた。木地形態は本作は直胴であるのに対して、定雄作の胴は下に行くに従ってやや広がっている。描彩では市太郎は普通の筆を使っているが、定雄の赤は平筆を使っているようだ。但し、前髪と鬢は細筆を重ねている。
頭部の描彩を見てみよう。左の市太郎は前髪の後ろと鬢の後ろ下部に緑の輪を描いているが、定雄作には見られない。定雄が参考にした原こけしに無かったのか、色が薄くて気が付かなかったのかも知れない。
胴底の状態である。共に大きく刳り貫かれていることが分かる。丑蔵から引き継がれた湯田の様式なのであろう。
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