第788夜:こけしの縁(佐藤正一)
長いこと、こけしの蒐集を続けていると、「これは、こけしの縁かなぁ!」と感じることが多々あり、本ブログでも度々触れて来た。昨日、こけしの整理をしている同僚が1本のこけしを見つけてきてくれた。明らかに新型こけしを思わせるものであったが、それが佐藤正一のこけしであることは分かった。先月発行した「太治郎三代のこけし」でも正一のこけしは数多く取り上げていたが、このようなものは無かった。まるで「私も忘れないで…」と言っているような気がした。今夜はそのこけしの紹介である。
こちらが、そのこけしである。大きさは4寸2分。古色と退色で正面からみた感じでは赤だけしか分からない。中央部を細く絞って鉋溝を2本入れ、胸部と裾部を大きく膨らませて畳付けを台状に変化させた形態は西洋人形を模したものであろうか。胴底には「土湯♨みやげ」と大きく書かれ、また正一の几帳面な細かい字で「昭和24年4月13日 佐藤正一作 45才」と署名している。昭和20年代中頃の土湯温泉での典型的なおみやげこけしなのであろう。頭部の描彩は太治郎型であるが前髪は劉海髪ではなく、赤い半円を3つ並べている。
正一の「温泉みやげ」と書かれたこけしは他にも持っており、第204夜で紹介している。その作(昭和24年6月)は本作と同様に三つ山の前髪を描いているが形態、描彩とも明らかに伝統こけしと言えるものである。本作はそれより2か月程前のものであるが、その当時は伝統的なものと新型風のものとが、同じ土湯温泉みやげとして売られていたのであろう。
204夜のこけし(左)と並べてみた。右の本作は色彩が残っている裏面である。胴底の台の部分と胸部の凸部、括れ部の突起には紫が塗られていたことが分かる。また、胸部と胴部二か所には太治郎本型の紫の波線が引かれていたことも微かながら確認できる。
最期に、胴底の「土湯温泉みやげ」の表記である。戦後、復興に向かっていた土湯温泉の状況を示すものとして興味深い。
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