第798夜:斎藤松助のこけし
蔵王系に斎藤松助という工人が居ることは知っていたが、その作るこけしについては戦後の丸頭で目尻がやや下がり気味の温和なこけしという印象しかなかった。そのため所蔵するまでには至らなかった。ところが先日ヤフオクに出た松助のこけしは角張った黒頭で、切れ長の鋭い瞳が凛々しいこけしであった。これは現物を見てみたいと入札に参加し激戦を制して入手することが出来た。今夜はそのこけしの紹介である。口絵写真はその表情である。
斎藤松助は明治35年10月11日、斎藤松治の二男として蔵王高温温泉に生まれた。大正2年尋常小学校卒業後父松治について木地修業、こけしを盛んに作ったという。大正6年16歳の時、県の木地講習会が蔵王高湯で開催され、松助も参加した。大正11年から入隊、同14年5月帰郷し、木地業を続けた。昭和3年27歳より東京で4年間働き、その後、山形市内で3年ほど働き、蔵王高湯に戻った。昭和12年9月に再び応召、同15年3月除隊した。この年の秋から父松治も木地を復活、松助は昭和17年8月より旅館招仙閣経営のため休業した。戦後は昭和40年秋以降こけしの製作を再開したが、作品数は限られている。昭和51年12月13日没、行年75歳。
大正期からこけしを作ったという松助であるが、戦前作で現存するものは応召前の昭和11年前後と除隊後の昭和15、6年の限られた時期に作られたものである。
こちらが今回のこけし。大きさは8寸3分。昭和15~16年のものと思われる。頭は小さめで角張っており、胴は頭に比べて太めで丈の長い直胴である。剛直で鋭い表情は、復活直後の松治こけしを彷彿させる。旅館経営のため、こけし製作を止めてしまったことが惜しまれる。
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